logo 不良債権とは何か


このページでは僕の友達で「mine-D's SPICE!」のオーナーでもあるmine-Dが「不良債権の最終処理って何?」という質問を寄越したのをきっかけにやりとりされたメールをそのまま掲載しています。僕の見方はかなり「銀行の論理」に傾いていますが、それでもできるだけフェアに解説したつもり。この厄介な問題を理解する助けになれば幸いです。(2001.8.6)


Date : 2001.7.30 23:44:11
Subject : 自己破産
From : mine-D
To : Silverboy

ところで、選挙も予想通り自民の圧勝に終わったワケだけど、争点の「不良債権」問題がさ、やっぱりよく分からないんだよね。おれがチェックしてる宮崎学氏が(選挙落ちたけどね)以下のような事言ってるんだけど、どう思う?実際のところ「誰が言ってることが正しいのか」なんて全然分からないんだけど、誰に聞いていいか分からないんで、ちょっとSilverboyに意見聞きたいと思った。

http://toppa.org/2001-7/010719-1.html

それにしても、ホントに不良債権の「処理」なんてできるのかね?本気でやったら日本経済自体が破綻しちゃうとか、そういう事はないのかね?この際、国ごと「自己破産」するとか?


Date : 2001.7.31 23:10:32
Subject : 最終処理
From : Silverboy
To : mine-D

こんにちは。元気でやってますか?

> 落ちたけどね)以下のような事言ってるんだけど、どう思う?実際のところ「誰が言
> ってることが正しいのか」なんて全然分からないんだけど、誰に聞いていいか分から
> ないんで、ちょっとSilverboyに意見聞きたいと思った。

不良債権の最終処理は重要な問題だけど、それを解決すればすべてがハッピーかというと決してそんなことはない訳で。最終処理というのは、今、カネを返せそうもない企業から敢えてカネを取り立てることをせず、せいぜい金利だけを支払ってもらって生きながらえさせ、一方でその会社がつぶれたときのために銀行が内部的に積立をしている、その2本立て状態をやめて、その会社を思い切ってつぶしてしまい、残ったものを売り払って借金を返してもらう、足りない分は積立で埋め合わせる、ということを進めて、早くすっきりしましょうということ。

これを実行すればもちろんいろんな物事がはっきり、すっきりして、足かせのようなものは確かになくなるけど、一方で低金利のおかげで何とか利払いをしながら食いつないでいる会社が大量につぶれることになるね。それから、そういう会社に思い切ってつぶれてもらった結果、返ってきたお金が見込みより少なくて、これまでの積立では足りなくなった場合(ほとんどの場合がそうなる)、その埋め合わせの負担に耐えきれなくてつぶれる金融機関(おもに地銀、第二地銀、信用金庫など)も出るだろうね。

不良債権の最終処理で失業者が出るというのはそういうこと。問題は今の日本経済にそれだけのインパクトを吸収する体力があるかどうかということで、それは極めて疑問でしょう。というか、みんなが生活水準を相当程度落とすことを受け入れればそれは不可能じゃないんだけど、いったん便利で楽で豊かな生活に慣れた人たちにはそれは極めて受け入れがたい。そういう意味では一般庶民もある種の既得権益に縛られてて、自分の血を流したがらないんだな。

それでも他に方法がないということで生活水準を落とすことをみんなで合意した場合、そこで問題になるのはおそらくその痛みが「平等」に分配されないということ。そこで起こるのは、これまでみんなが平等だと思ってきた日本の社会に新しい階層が生まれるということであり、貧富の差がもっとダイナミックになるということでしょう。実力が認められる競争社会といえば聞こえはいいけど、それはハードな世の中だと思う。要はやる気のないものは容赦なく飢えろということでしょ。そういう前提に慣れていない社会にそういう運動原理を持ち込むと、少なくとも一時的に歪みが噴出すると思う、ていうかそれがもう出てるんだよ。それは一種の階級闘争になるかもしれない。

まあ、そんな訳で、僕の答えは「不良債権の最終処理は不可能じゃないけど、そこから国民全体が背負わなければならない痛みは半端なものじゃない」ということ。みんなが本当にそこまで覚悟して「改革」を支持しているのか、「改革」で割を食うのはまさにそういう「一般ピープル」だということをみんな認識しているのか、それを考えると日本人ってお気楽だよなあと思ってしまうこの頃でした。

このメール、そのままコラムにできるな。

ではまた。


Date : 2001.8.2 00:00:17
Subject : 引き続き…
From : mine-D
To : Silverboy

不良債権問題、ちょっと続けさせてください。

> てもらって生きながらえさせ、一方でその会社がつぶれたときのために銀行が内
> 部的に積立をしている、その2本立て状態をやめて、その会社を思い切ってつぶ
> してしまい、残ったものを売り払って借金を返してもらう、足りない分は積立で
> 埋め合わせる、ということを進めて、早くすっきりしましょうということ。

まず、その「銀行が内部的に積み立て」ってのがよく分からないんだけど、少し詳し く説明してもらえないだろうか?不良債権を抱えてる銀行は、どこもやってることな の?

> これを実行すればもちろんいろんな物事がはっきり、すっきりして、足かせのよ
> うなものは確かになくなるけど、一方で低金利のおかげで何とか利払いをしなが
> ら食いつないでいる会社が大量につぶれることになるね。それから、そういう会
> 社に思い切ってつぶれてもらった結果、返ってきたお金が見込みより少なくて、
> これまでの積立では足りなくなった場合(ほとんどの場合がそうなる)、その埋
> め合わせの負担に耐えきれなくてつぶれる金融機関(おもに地銀、第二地銀、信
> 用金庫など)も出るだろうね。

なるほどね。けっきょく不良債権っていうのは、バブル期に担保価値のないものをムリヤリ担保にして金を貸しまくった結果生じてるワケだよね?ならば当然回収するのはムリがあるんだろうね。となると、結局最終的には「公的資金の導入」って事になってくると思うんだけど。絶対やるでしょ?何年か前の住専への公的資金導入だって、あれだけ大騒ぎしたのにみんなすっかり忘れちゃってるし。ただ、完璧に処理しようとすれば恐ろしいほどの額になるんだよね?きっと。生活水準を下げてまで不良債権問題に協力しようなんて国民はいないと思うし、今回自民に入れたヤツらだって、まさか自分が金を払わなきゃいけないなんて、きっと夢にも思ってないんだと思うよ。

でもまあ、いずれにせよいくばくかの税金が投入されるのは間違いないよね?そうなった場合、おれみたいに別にバブルでおいしい思いもしなけりゃ痛い目も見てない、「バブル外」の「一般庶民」感覚から言うと、「ちょっと待て」と。先述の宮崎氏はバブルを「戦争」に例えていて、負けたワケだから当然「戦犯」がいるはずだと言ってるんだけどまず先に戦犯が責任をとるのが先だろう、と思うワケだよね。これは当時の官僚なのか、金を貸しまくった銀行の責任者なのかは知らないけど、「誰かに、なんらかの方法で」責任を取ってもらう事はできるんだろうか?

この辺について書いてある、前回とは別の宮崎氏の文章も見てほしいんだけど。

http://www.zorro-me.com/2001-7/010712.htm

> まあ、そんな訳で、僕の答えは「不良債権の最終処理は不可能じゃないけど、そ
> こから国民全体が背負わなければならない痛みは半端なものじゃない」というこ
> と。みんなが本当にそこまで覚悟して「改革」を支持しているのか、「改革」で
> 割を食うのはまさにそういう「一般ピープル」だということをみんな認識してい
> るのか、それを考えると日本人ってお気楽だよなあと思ってしまうこの頃でした。

ふーむ。ここまで考えると、「じゃあ、なにもわざわざムリして最終処理をしてしまわなくてもいいなじゃない?今のままじゃダメなのかなあ?」って思うんだよね。それを、ムリして「改革」の名の下に強行しようとしてる(あるいはせざるを得ないのかもしれないけど)のはなぜなのか?あと、不良債権問題と景気動向との関係も分からないんだけど、景気の回復のためには、やっぱり不良債権をなんとかしなくちゃいけないのかな?

てな感じの素直な疑問ですが。ひとつよろしく。まとまれば「緊急対談」にしてCSL に入れる(笑)?


Date : 2001.8.2 01:11:02
Subject : 不良債権
From : Silverboy
To : mine-D

こんにちは。元気でやってますか?

> まず、その「銀行が内部的に積み立て」ってのがよく分からないんだけど、少し詳し
> く説明してもらえないだろうか?不良債権を抱えてる銀行は、どこもやってることな

一般に「貸倒引当金」というのがそれです。例えば1億円の貸金に対して担保の価値が今や3千万円、それ以外に元金を返してもらえそうな見込みもないというときには、銀行自身の儲けの中から、7千万円をその穴埋めのために内部的に留保する(株主に配当しないで取っておく)訳。

不良債権の金額に対して、この「貸倒引当金」をどれだけ積み立てているかが、一般にいう「不良債権の処理率」ですね。返してもらえなさそうな貸金が1000億円あるけど、その分は過去の儲けからきちんと積み立ててあります、穴埋め資金は用意してあります、というならそれは実体的には既に処理されている、と。

最終処理というのは、一方で顧客への貸金を継続しながら、他方でそれが返ってこないことを前提に穴埋め資金を用意するというこの2本立てをやめて、はっきりケリをつけてしまいなさいってこと。具体的にはまず担保を処分して取れるものを取る、次にそれで足りない部分を穴埋め資金で実際に穴埋めして、その貸金を銀行の帳簿から消してしまう。

こうすれば、これから地価がますます下がっても、あるいは顧客の営業状態がそれ以上悪化してももう心配することはないということです。

> とすれば恐ろしいほどの額になるんだよね?きっと。生活水準を下げてまで不良債権
> 問題に協力しようなんて国民はいないと思うし、今回自民に入れたヤツらだって、ま
> さか自分が金を払わなきゃいけないなんて、きっと夢にも思ってないんだと思うよ。

不良債権というのは、銀行だけの問題ではなく、バブルの後始末や不景気のツケを、銀行のバランスシートを使って処理しようというだけのことなんだよね。

不良債権を完全に処理しようと思えば、繰り返しになるけどまずギリギリで生き延びてるけど実際にはよくなる見込みもない会社はバタバタつぶれることになる。つぶれなくても大規模なリストラが必要になる。この段階で大量の失業者が出るね。

そこで発生した焦げ付きを、銀行が上で書いたみたいな「貸倒引当金」の範囲で処理できればいいけど、体力の弱い中小金融機関ほどその引当は基準が甘くて実際にはそれじゃ足りなくなるだろうから、そういうのもバタバタつぶれるかもしれない。

そうなると、そこの従業員が失業するのは当然として、一般の人がそこに預けていたカネも一部は返ってこなくなるかもしれない。それはマズいというなら預金は税金から払い戻すしかない。公的資金を投入するというのは、何も銀行を助けたいからやってる訳じゃなくて、そんなふうに銀行に預けた預金が返ってこなくなるというような事態が発生すると、金融システムに対する信頼自体が揺らいで、経済がマヒしかねないから、つぶれた銀行に預金した哀れな人を、みんなの税金で助けてあげましょうということなんだ。

つまり、不良債権は銀行に体力があって銀行がそれを負担している限りは銀行の問題だけど、銀行が「貸したのに返ってこないおカネ」の負担に耐えられなくなって倒産してしまえば、そのツケはどのみち結局みんなで負うしかない。一般企業が赤字に耐えられずバタバタ倒産して銀行にそのツケを押しつけていいのなら、銀行だって倒産していけない道理はない。だって、自分が貸したカネを返してもらえないのに、借りたカネ(預金)だけはきちんと返す、なんてことはそんなにいつまでもやってられないんだから。

でも、銀行が倒産すると、その影響は一般預金者に直接及ぶ。だから銀行も必死で儲けを不良債権の処理につぎこむ訳だし、国も公的資金を投入してでも銀行は簡単にはつぶせないと考える訳だ。

だから、言葉尻をとらえるようだけど、国民が銀行の不良債権処理に「協力」するんじゃなくて、不良債権はもともと国民全体の問題で、今は銀行という防波堤がそれを一身にかぶって処理しようとしているけど、いずれそれがもたなくなったら結局は皆さんの負担になるんですよ、ということ。

ということで、残りは明日。ではまた。


Date : 2001.8.4 00:04:12
Subject : 経済と倫理
From : Silverboy
To : mine-D

こんにちは。元気でやってますか?

続きです。

> バブルを「戦争」に例えていて、負けたワケだから当然「戦犯」がいるはずだと言っ
> てるんだけどまず先に戦犯が責任をとるのが先だろう、と思うワケだよね。これは
> 当時の官僚なのか、金を貸しまくった銀行の責任者なのかは知らないけど、「誰かに、
> なんらかの方法で」責任を取ってもらう事はできるんだろうか?

バブルに戦犯がいるのか、ということになると僕はどうも懐疑的だなあ。もちろん日銀の金融政策や大蔵省の財政政策、大銀行の無軌道な融資やゼネコンの無茶なリゾート開発、そんなふうに挙げていったらキリがないくらいバブルの「元凶」なんて名指しできると思うけど、僕はどれもこれも決定的なファクターだとは思えない。むしろ、そういうものを生み出した大きなバックボーンみたいなものがあって、それは端的に言えば一億総無責任体制とでもいうような、むしろバブルが終わった後で、「バブルの戦犯はだれだったのか」的な物言いが通用する社会の空気みたいなものこそがバブルの本質的な原因だったんじゃないかという気がしてならない訳だ(もちろんmine-Dを責めてる訳じゃない)。

責任というならそれは日本国民みんなの責任だし、仮に個人的にバブルから何の恩恵も受けてなかったとしても、バブルが社会的な現象だった以上、その社会に身を置いてその内部で日々の営みを行っていた国民はある意味でみんな戦犯なんだと思う。そう、それを戦争に例えるのならなおのこと、国民の支持なしに遂行できる戦争なんてない訳で、その旗振りをしたと目される少数の人間を戦犯として断罪してみたところで、国民がひとつの歴史としてその戦争を戦ったということの主体的責任はどのみち免れ得ないんじゃないかな。

第二次世界大戦が終わったとき、昨日まで天皇陛下バンザイ、鬼畜米英だった一般庶民が急に民主主義者に変わって私は戦時中からこれはおかしいと思っていたんだと言い出すのにも似た無責任さ、他人事感覚を僕は感じてしまうし、僕はそういう「庶民感覚」こそ怖いと思う。そういう人はきっと本当に自分は戦時中から戦争に反対してたように思っているんだろう、悪気もなく、無邪気に。僕はそれよりはそういう世の中の浮薄さが耐えられずに筋を通すために腹を切った軍人の方が数倍まともだと思う。いや、僕は腹を切る気はないけどさ。

結論的にいえば、バブルの責任者をスケープゴート的に断罪することに何か積極的な意味があるとは僕には思えないってことかな。

> れを、ムリして「改革」の名の下に強行しようとしてる(あるいはせざるを得ないの
> かもしれないけど)のはなぜなのか?あと、不良債権問題と景気動向との関係も分か
> らないんだけど、景気の回復のためには、やっぱり不良債権をなんとかしなくちゃい
> けないのかな?

倫理的な議論から再び経済的な議論に戻りますが、なぜ不良債権の最終処理をしなければならないか。

銀行が返ってくるあてのないカネを貸しっぱなしにしているということは、預金者から預かったカネを場合によっては利息すら生み出さない対象に投資しているということ。そうしている限りそのカネは「死にガネ」な訳です。今、そういう何の足しにもならない、おそらくは元本割れの発生している対象に投資されたカネ(つまり不良債権)が日本中で恐ろしい金額になっていると。

そのために、成長産業や力のあるベンチャー、中小企業など、本当におカネの必要なところにおカネが回って行かない、つまり資金が固定化しているという状態になってる訳。しかもこの先そういう不良債権がどれだけ増えるかも分からないという不確定要因もある。

だからこの際そういう投資はスッパリと清算して、ダメな部分は損切りし、戻ってきたカネを本当に投入するべきところにきちんと回しましょうということ。あきらめるものはあきらめて、身軽になって出直しましょう、って感じかな。

ただ、確かに不良債権の最終処理と景気回復の因果関係は分かりにくい。(リストラ、倒産、失業という)最終処理のプロセスだけを見れば、むしろそれは景気を悪化させるだけのような気すらする。ただ、問題意識のあり方としては、このまま塩漬けの不良債権を抱えて一日延ばしに延命していても先はないですよ、日本という国自体が抜本的に構造を改革しないとこれからの変化にはついて行けないけど、そのためには今抱えている重荷はここできちんと清算しなければならないのです、もちろんそれは簡単ではないし、その過程で落ちこぼれる人、不幸になる人もたくさん出るだろうけど、それはいつか通らねばならない道、いや、遅すぎたくらいなんです、ということでしょう。

そういう意味で小泉首相の言っていることは間違いではない。ただ、繰り返しになるけど、本当にみんなそこまで理解して、覚悟して支持しているのかということが僕はとても不安で仕方ない訳ですよ。

> てな感じの素直な疑問ですが。ひとつよろしく。まとまれば「緊急対談」にしてCSL
> に入れる(笑)?

うん、いい考えかもしれない。でも僕の独演会になっちゃってるんじゃないかな。うまく成形できればいいんだけど。

ではまた。


Date : 2001.8.5 22:16:38
Subject : 無料レクチャー
From : mine-D
To : Silverboy

こんにちは。元気でやってますか?

なんかタダでレクチャーしてもらってるみたいで、悪いね。でもすごく面白いです。

> そうなると、そこの従業員が失業するのは当然として、一般の人がそこに預けて
> いたカネも一部は返ってこなくなるかもしれない。それはマズいというなら預金
> は税金から払い戻すしかない。公的資金を投入するというのは、何も銀行を助け
> たいからやってる訳じゃなくて、そんなふうに銀行に預けた預金が返ってこなく
> なるというような事態が発生すると、金融システムに対する信頼自体が揺らいで、
> 経済がマヒしかねないから、つぶれた銀行に預金した哀れな人を、みんなの税金
> で助けてあげましょうということなんだ。

なるほど。全体的なバランスを考えなきゃいけないもんね。それはある程度しょうがないとは言えるね。

> つまり、不良債権は銀行に体力があって銀行がそれを負担している限りは銀行の
> 問題だけど、銀行が「貸したのに返ってこないおカネ」の負担に耐えられなくなっ
> て倒産してしまえば、そのツケはどのみち結局みんなで負うしかない。一般企業
> が赤字に耐えられずバタバタ倒産して銀行にそのツケを押しつけていいのなら、
> 銀行だって倒産していけない道理はない。だって、自分が貸したカネを返しても
> らえないのに、借りたカネ(預金)だけはきちんと返す、なんてことはそんなに
> いつまでもやってられないんだから。

うーむ。しかし、この辺よく分からないんだけど、不意の事態で貸した金を返してもらえなくなった場合に備えて、「担保」という制度があるワケだよね?まあ、土地の値段が下がっちゃったって事もあるとは思うんだけど…。でも、おれが住宅ローンを組んだときも、信用というか、要するに「こいつはこの先返す見込みがありそうか」ってのを、かなり徹底的に調べられたよね?ほんの何千万程度の融資でさえそうなら、億単位の融資なんて、もっと慎重になって当然という気がするんだけど、今日本全国でこれだけの不良債権を抱えてるっていうことは、そういう見通しが甘かった、あるいはかなり強引な融資を行ったってことはないんだろうか?それに対する責任は誰もとらなくていいの?って気もするんだよね…。

> だから、言葉尻をとらえるようだけど、国民が銀行の不良債権処理に「協力」す
> るんじゃなくて、不良債権はもともと国民全体の問題で、今は銀行という防波堤
> がそれを一身にかぶって処理しようとしているけど、いずれそれがもたなくなっ
> たら結局は皆さんの負担になるんですよ、ということ。

どうなんだろうなあ。でも、ぶっちゃけていえば、これは債権者と債務者の間の問題でしょ?って気もするんだよね。基本的に。もちろん、金融や経済システム自体に対する信用確保ってのは大事だとは思うんだけど…。この辺複雑だなあ。基本的には人ごとなんだけど、やっぱり日本という国全部の問題でもある、と…。

> 第二次世界大戦が終わったとき、昨日まで天皇陛下バンザイ、鬼畜米英だった一
> 般庶民が急に民主主義者に変わって私は戦時中からこれはおかしいと思っていた
> んだと言い出すのにも似た無責任さ、他人事感覚を僕は感じてしまうし、僕はそ
> ういう「庶民感覚」こそ怖いと思う。そういう人はきっと本当に自分は戦時中か
> ら戦争に反対してたように思っているんだろう、悪気もなく、無邪気に。僕はそ
> れよりはそういう世の中の浮薄さが耐えられずに筋を通すために腹を切った軍人
> の方が数倍まともだと思う。いや、僕は腹を切る気はないけどさ。

ふむ。第二次大戦に対する日本国民のいいかげんな態度に対しては同感だけど、バブルの場合は、少し違うようにも感じるな。

それは要するに、「国民全体がそこから何を得たか」って事じゃないかと思うんだけど…。第二次大戦の時は、その戦争を遂行することによって、例えば領土であったりとか、具体的に国に還元されるものがあったワケでしょ。結果的には負けちゃったけど。あるいは精神的なもの…戦局に勝利する事による高揚感とか、国民が一丸となる一体感とか…そういうものを享受し得たからこそ、国民全体が「積極的に」戦争に協力する、という構造が成り立っていたと思うんだよね。

ところが、バブルの場合は…おれはバブルの後半にはすでに社会に出ていたワケだけど、正直にいってそこでなにが起こっているのか、全然分からなかった。「空前の好景気」の中で、「それでも、自分の給料には全然関係ないなあ」とぼんやり考えていた程度。もちろんその間にも、資金があって、金融の現場にいて何が起こってるか理解した人間は、たくさんお金儲けをしたり、逆に破産したりしたんだろうけど、それらはあくまで自由競争社会における利潤追求の域を出てなかったろうし、けしてなんらかの「国益」に結びつくようなものではなかったと思うんだよね。競争社会なんだから、誰が勝者になろうと、敗者になろうと勝手なんだけど、それなら最後まで競争社会の論理で片を付けろよって言いたくなる。あまりにも負債の規模が大きくなりすぎました。金が戻ってきません。どうしましょ。そこで「それなら…」といきなり「公的概念」を持ち出してくるのが気にくわないんだよね。

> 結論的にいえば、バブルの責任者をスケープゴート的に断罪することに何か積極
> 的な意味があるとは僕には思えないってことかな。

だから、おれはもうバブルに対して金を払う事はしょうがないと諦めてるんだけど、ただ金出すだけじゃ腹立つから、誰か血祭りに上げろよって言いたくなるワケ(笑)。国全体の事なんかこれっぽっちも考えないでてめえの利益を追求しまくったにも関わらず、うまく生き延びてるヤツがいっぱいいるワケでしょ。誰かは分からないんだけどさ。とりあえず、そいつらを絞首台に乗せるのが先だ、と。

> そういう意味で小泉首相の言っていることは間違いではない。ただ、繰り返しに
> なるけど、本当にみんなそこまで理解して、覚悟して支持しているのかというこ
> とが僕はとても不安で仕方ない訳ですよ。

なるほどね…。そういう「改革への動機づけ」っていうのは、完全に内部的に出てきたもんなんだろうか?あるいは外圧とか、経済方面からの要求とかも、かなりきついんだろうか?アメリカは、以前何度か「不良債権処理」を迫っていたような気もするんだけど…。

しかし、そもそもバブルってなんだったんだろう?って感じがしてきたなあ。なぜバブルが起きたのか、バブルとは何だったのかってところも、まだ時間がある時にでもレクチャーしてください。

> うん、いい考えかもしれない。でも僕の独演会になっちゃってるんじゃないかな。
> うまく成形できればいいんだけど。

うーん、なんかうまくまとめる自信がない(笑)ので、Silverboy Clubの方でコラムにして発表するのがいいんじゃないでしょうか?いや、ありがとう。ためになりました。

それでは。


Date : 2001.8.5 23:43:56
Subject : 締めるか。
From : Silverboy
To : mine-D

こんにちは、西上です。元気でやってますか?

> でこれだけの不良債権を抱えてるっていうことは、そういう見通しが甘かった、ある
> いはかなり強引な融資を行ったってことはないんだろうか?それに対する責任は誰も
> とらなくていいの?って気もするんだよね…。

そうだね、まず当時はそういう貸出に対する審査が甘くなっていたということはあるかもしれない。というか、冷静に考えればこんなふうに地価も株価も一本調子で上がり続けるなんてある訳ない、必ずどこかでクラッシュするということくらい分かりそうなもんだよね。今みたいな不良債権の山ができたのは、日本中が一種の熱みたいなものにうなされてて、だれもそういう冷静な判断ができなかったってことなんだろうな。

後から考えればごく当たり前のことのように思える。でも、例えばほんの1、2年前のアメリカでも株価バブルみたいなものがあって、どう見ても持続不可能なカーブで株価が上がり続けていたのに、それがいつかクラッシュするということをきちんと指摘した人は少なかった。あのバブルのさなかにそういう観点で融資を厳しく審査するということは実際上不可能だったと思うし、個人的に危機感を持ってそういう動きをした人はきっと組織から排除されてたと思う。

要は一種の集団ヒステリーみたいなもので、その責任をだれか個人に持って行くのはただのスケープゴートだと思うんだよね。

> どうなんだろうなあ。でも、ぶっちゃけていえば、これは債権者と債務者の間の問題
> でしょ?って気もするんだよね。基本的に。もちろん、金融や経済システム自体に対
> する信用確保ってのは大事だとは思うんだけど…。この辺複雑だなあ。基本的には人
> ごとなんだけど、やっぱり日本という国全部の問題でもある、と…。

預金者と銀行っていうのも、債権者と債務者だからね。だから銀行が債務者から資金を回収しきれなくて破綻したときに、銀行の債権者である一般預金者も、これは債権者と債務者の問題だから仕方ないよね、こんな銀行にカネを預けたオレがバカだったよ、と言ってあきらめてくれるかというだけの問題だと思う。で、あきらめてくれないからこそ公的資金を投入せざるを得ない訳で。

> ただ金出すだけじゃ腹立つから、誰か血祭りに上げろよって言いたくなるワケ(笑)。
> 国全体の事なんかこれっぽっちも考えないでてめえの利益を追求しまくったにも関わ
> らず、うまく生き延びてるヤツがいっぱいいるワケでしょ。誰かは分からないんだけ
> どさ。とりあえず、そいつらを絞首台に乗せるのが先だ、と。

それは感覚としては非常によく分かるし、むしろそうはっきり言ってくれた方がいい。でもさ、住専の某とかそごうの某とか、そういう形で既に槍玉に挙げられた人も何人かいて、そういう個人を破滅させることで一時的に溜飲は下がるかもしれないけど、僕なんかはやっぱり「これって何? どうしてみんな他人事みたいにだれか一人に責任を押しつけて満足できちゃう訳?」と思ってしまいますな。

> なるほどね…。そういう「改革への動機づけ」っていうのは、完全に内部的に出てき
> たもんなんだろうか?あるいは外圧とか、経済方面からの要求とかも、かなりきつい
> んだろうか?アメリカは、以前何度か「不良債権処理」を迫っていたような気もする
> んだけど…。

それは両方あると思う。このままじゃあかんというのは比較的明白なことで、問題は「とはいえ急に改革するのはしんどいし、景気が悪くて体力のないときにそんなことしたら死んじゃうかもしれないから、もうちょっと様子を見て景気が回復してからやりましょう」という人たちと、「改革しないと景気なんてよくなる訳がない、本当に手遅れになるから体力的にはきついけどみんなで耐えて今すぐやらないとマズいことになりますよ」という人たちとの対立で、既存の利権に深く関わってる人ほど守旧派、そこに深い関わりを持たない人が改革派なんだよね、当たり前だけど。そこの力関係に外圧が作用しているという感じじゃないかな。

> しかし、そもそもバブルってなんだったんだろう?って感じがしてきたなあ。なぜバ
> ブルが起きたのか、バブルとは何だったのかってところも、まだ時間がある時にでも
> レクチャーしてください。

またやろう。




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