![]()
アルバム「THE CIRCLE」のリリース30周年を記念したスペシャル・パッケージ。当初12月18日リリースとされていたが11月下旬になって発売の1週間延期が発表された。「THE CIRCLE」がリリースされたのは1993年なので今年は31周年にあたるはずだが、1年遅れの、それも年末になって「30周年」とは。 パッケージの内容は、オリジナル・アルバムと「THE CIRCLE RE-MIX & ALTERNATES」と名づけられた別バージョン集の2枚のCDに加え、1994年4月24日に日本武道館で行われたライブの模様を完全収録したものと放送番組映像などをまとめたものの2枚のBlu-rayディスク、140ページ弱の大判のブックレット、ツアーパンフの復刻版、ポスターなどが詰めこまれて税込24,200円。本作と同時にアルバムのアナログ盤もリリースされている。なお、映像作品については別稿を参照されたい。 オリジナル・アルバムはテッド・ジェンセンによる2016年のリマスター音源(CDが規格番号を変えて再リリースされた際のもの)であり現在流通しているカタログと同じ。 別バージョン集は1994年にリリースされたリミックス音源集「Dance Expression of THE CIRCLE」を全曲収録したほか(M1〜5)、2011年のセルフカバー・アルバム「月と専制君主」から2曲(M6〜7)、『彼女の隣人』のシングル・バージョン、2011年リリースのライブ・アルバム「ALL FLOWERS IN TIME」から2曲(M9〜10)の全10曲。いずれも既発表の音源でありこのパッケージでしか聴けないものはない。 「THE CIRCLE」はザ・ハートランドと制作した最後のアルバム。佐野元春はこのアルバムで、初期から歌い続けてきた「イノセンス」の行方にあらためて対峙した。「それは失われるのではなく人生の重要な局面で円環を描いて我々のまえに立ち現れる」という認識(サークル・オブ・イノセンス)がこの作品の底流にあるテーマである。アルバムそのものの詳しい評価についてはアルバム評を参照してほしい。 「THE CIRCLE」の発表当時は、オリジナル・アルバムのほか、上記のダンス・リミックス集である「Dance Expression of THE CIRCLE」、ロンドンで制作したビデオ・クリップ集である「Visual Expressions of THE CIRCLE」などの複数のアイテムを含めてトータルにコンセプトが展開されていたが、その後関連アイテムは入手が困難になったものもあり、こうしてひとつのパッケージとしてリリースされることにそれなりの意義はある。 しかし、上記のとおり既発表音源のみのCD2枚、Blu-rayディスク2枚という内容にもかかわらず、1年半前にリリースされた「SWEET 16 30TH ANNIVERSARY EDITION」(CD6枚、BD1枚、オリジナル・アルバムはランディ・メリルが新たにリマスター、初出のスタジオ音源を2曲収録で税込22,000円)よりもさらに値段が高いというのは、その間の諸物価の高騰を考えに入れてもいささか取り過ぎの感を免れない。 なにを求めるかは人によると思うが、僕としては大判のブックレットなどは特に不要で、この内容ならCD2枚とBD2枚のみの通常パッケージで5,800円程度で出してくれれば十分だった。長年のファンのロイヤリティにつけこんだ商売は感心しない。かさばる箱ものばかりが狭い家に積みあがって行くのはなんとかしてほしい。 2024 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |