Silverboy Club Music Award 2017 1年間にレビューした新譜を評点の順に並べて振り返るというこの企画も第19回。今回から少し文体を変えてみる。 今年は最高点(★★★★☆)にダーティ・プロジェクターズ、ノエル・ギャラガー、コーネリアスの3組が並ぶ形になったが、アワードは、既にトップ・アーティストのベックや自分的にフェイバリットのコーネリアスを外し、ダーティ・プロジェクターズに授与することにした。デイヴ・ロングストレスさんはこれを見ていたら喜びのコメントを送って欲しい。 ダーティ・プロジェクターズは所謂ブルックリン一派のアーティストで実質的にはロングストレスのソロ・プロジェクト。基本的に実験色の濃いインテリ系の音楽だが、そこに抜き去り難い人間の生身感みたいなものが窺えて、それがチャームになっている。既にキャリアの長い人だが、これからも追って行きたいアーティストである。 次点はコーネリアス。前作「SENSUOUS」から10年以上を経てリリースされた今作は、これまでの流れを引き継ぎつつも、改めて肉声の持つ力場の意味性に立ち戻ったような新鮮さが印象的。奇しくも小沢健二復活の年にもあたり、フジロックでふたりがニアミスしたとかしないとか、彼ららしいポップなゴシップも楽しかった。小沢のシングルとセットでの授賞も考えたが、話題性とは関係なく素晴らしい作品なので余計なことはやめといた。 3位はノエル・ギャラガー。デヴィッド・ホルムズをプロデューサーに迎えて制作された本作はオアシス時代を含めても最も「越境」への意志を秘めたもの。しかしその一方でその伸長力を下支えしているのはノエルのソングライティング。あとここにリアムの声があればなあとか思われるのは宿命だろう。リアムの新譜とセットでの授賞は既に「ローリング・ストーン」誌がやってた。 優秀賞は評点「★★★★」のサーストン・ムーアとベック。どちらも長いキャリアの中できちんと現代にフックする危機感を鳴らしているところがカッコええ。「いい作品」にとどまらず、「オレの庭」まで侵犯してくる手ごたえのある作品だった。 今年、新譜レビューの対象になったアルバムは24枚で昨年と変わらず。意識して減らしてるつもりなんだけど、やっぱり月2枚くらいは買ってしまうということか。聴いているものの中心は、かつての英系ギターバンドから明らかに米系のオルタナティヴに変わりつつあり、今年のアワードもそんな感じになった。 もう寝ずに聴き続けても2カ月とか3カ月とかかかるくらいのCDが家にあって、それでも新しい音楽を聴くのかなあと思いながら、週末ごとにタワレコに出かけてはついCDを買う。これまで人生の中で場当たり的に聴いてきたアルバムを、もう一度系統立てて聴き直し、自分の中での位置づけを確認する「ディスコグラフィ・レビュー」の方に力を入れて行きたいが、新しいものは新しいもので少しずつ聴き続けて行くのだろう。 今年は小沢健二の復活が面白かった。ベルセバもEPを連打するシリーズを始めている。音楽は続いて行く。 【選考結果】 2017 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |