Silverboy Club Music Award 2010 皆さん、1年間のご無沙汰でした。輝く第12回 Silverboy Club Music Award、今回は新譜レビューが追いつかなくて久しぶりの越年となってしまいました。1年間に聴いた新譜の中から最も評点の高かったものを集計して発表するというシンプルなスタイルで早や12年、早速2010年のベスト・ディスクを見て参りましょう。 今回、評点としては山田稔明の「HOME SWEET HOME」が「9竹」という最高点を獲得しました。しかしながら、前回の「PILGRIM」同様、ゴメス・ザ・ヒットマンは当サイトでは「別格」なので例によって選外とし、審査員特別賞を授与することとなりました。前作と対をなす静謐な世界観、さりげない言葉遣いが示唆する自分だけの心象風景にハッと息をのむ瞬間、生の無常を基調としながらその中で僕たちが見出して行く泡のようなひとときの心の動き。できる限りたくさんの人に聴いて欲しいアルバムであることは間違いありません。 では、まず大賞の発表です。輝く第12回 Silverboy Club Music Award、大賞受賞者は、エドウィン・コリンズさんに決まりました。大賞候補には、エドウィン・コリンズの他、ポール・ウェラー、デッド・ウェザー、アッシュが評点「8竹」で並んだ訳ですが、この2010年代にあって清新なギター・ロックの神髄を改めて見せつけたエドウィン・コリンズを推す声が強く、初の受賞となりました。パチパチ。エドウィン・コリンズさん、これをご覧でしたら是非喜びのコメントをお願いします。 脳出血からの復帰というエピソードもありましたが、本作はそのようはサイド・インフォメーションを別にしても、オレンジ・ジュース時代をもしのぐ傑作との評価を得たものです。ロックという音楽が本来その本質として抱えている単純なカッコよさを、最もシンプルな形で再発見した作品と言って差し支えないと思います。最終的には審査員一致の結論でした。おめでとうございます。今後も元気で活躍されることを期待します。 2位はポール・ウェラーが選ばれました。本質だけを小気味よく、端的に並べたこのアルバムは彼のたどり着いた地点が、僕たち自身の「現在」と確実に呼応していること、つまりは彼が同時代のアーティストとして最先端を走り続けていることを証明する作品であったと思います。既にビッグ・ネームであり、デッド・ウェザーの革新性の方を推す意見もありましたが、連続性の上に今日性を獲得したウェラーの地力を評価する意見が上回り、2005年の大賞以来の入賞となりました。 3位は僅差で涙を飲んだデッド・ウェザーが獲得しました。誤解を恐れずに言えば、これはもうジャック・ホワイトの才能の勝利でしょう。決して聴きやすい作品ではありませんが、ここにぶち込まれた音楽的な熱量は圧倒的なものです。ジャック・ホワイトとしては2007年のホワイト・ストライプス以来3年ぶりの入賞です。 さて、今年はここでもう一作、アッシュの「A-Z VOL.1」と「A-Z VOL.2」に審査員特別賞を贈ることとなりました。入賞選考の過程では、シングルのコンピレーションということで入賞作品に比べ不利になりましたが、通常のアルバム・フォーマットから逸脱し、隔週でシングルをネットで26作発表するという試みはCDからダウンロードへというメディアの移行が取り沙汰される中で示唆的な取り組みであり、これを評価すべきであるという強い意見が一部から出されたことを考慮したものです。何よりそこで発表された個々の曲のクオリティが恐ろしく高かったことが特別賞受賞の決め手になりました。2007年に次点を獲得して以来の受賞で、高い実力を裏づけました。 優秀賞は評点「8梅」を獲得した6作品となりました。ヴァンパイア・ウィークエンド、アーケード・ファイアというふだんの僕の趣味からはやや異色のバンドがふたつもランク・インしたのは今年の特徴的なできごとかもしれません。コーラルは結果論的に言えば正直もう少し高く評価しておいてもよかったなと思いました。 2010年は英米に拘らず、先に挙げたヴァンパイア・ウィークエンドやアーケード・ファイアなど評価の高い作品を積極的に聴いた1年だったと思います。その結果、例えば音楽誌各誌のベスト・ディスク企画でもここ数年にない手持ち率の高さでした。「クロスビート」なんかトップ7は全部聴いたアルバムでした。それは別としても、年初からそれぞれのアルバムに驚きをもって向き合ういい聴き方ができたような気がします。守備範囲外のものも含め、楽しんで音楽の聴けた一年でした。これからも音楽の本質に耳をそばだてて行きたいと思います。 自分の聴きたいのはどんな音楽なのか、それを探すために今年も僕はCDを買い続けるでしょう。パッケージからダウンロードへの移行がどう進んで行くかもスリリングな一年になるでしょう。そうした環境の中でアーティストとリスナーの利益をどう調和させるか、既成の音楽業界はそこにきちんとビジネス・モデルを構築できるか、その部分もしっかり目撃したいです。 そんな訳で、個人的なロック体験としての第12回 Silverboy Club Music Award、大賞はエドウィン・コリンズさんでした。それではまた今年の年末にお目にかかりましょう。 【選考結果】
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