logo Silverboy Club Music Award 2008


1年間のご無沙汰でした。年末恒例となった Silverboy Club Music Award も今年で10回目を迎えることになりました。すごいですね。ていうかいい年して何してるんだという感じもしますが、まあ、そういうのも10年続ければ何か意味が出てくるような気もします。記念すべき第10回 Silverboy Club Music Award、今年もベスト・ディスクを発表して参りましょう。

では、まず大賞の発表です。記念すべき第10回 Silverboy Club Music Award 2008、大賞受賞者はザ・フラテリスの皆さんに決まりました。パチパチ。ジョン・フラテリさん、これをご覧でしたら是非喜びのコメントをお願いします。ザ・フラテリスは2007年デビューの若いバンドですが、昨年デビュー・アルバムが出たときには当サイトとしてはまったく認識がありませんでした。せめて昨年の各誌のベストを見て年明けにファーストを聴いておけばよかったと思います。セカンドのレビューを見て思いきって買ってみてよかった。今年、「8松」をマークしたのはこの作品だけでした。

受賞作「Here We Stand」は1曲目のイントロを聴いただけで名作と分かる稀有なアルバムです。ブリティッシュ・ロックの歴史を踏まえながら、ロックを聴くことの原初的な喜びをきちんと認識させてくれる、正統的な力のある作品であったと思います。若いバンドではありますが今後の活躍に期待する声が多く挙がりました。次作以降を注目したいと思います。

次点には4作が同じ評点で並ぶこととなりました。REM、エルヴィス・コステロ、コールドプレイ、ヴァインズと実力派が激しい争いを繰り広げましたが、審査員からはこの中でも若手のヴァインズの清新さを推す声が最も強く、結果としてヴァインズが2位に選ばれました。この2位については大きな異論はありませんでした。

3位は紛糾しました。それぞれ甲乙つけ難い優秀な作品ばかりであり、コールドプレイの一段階突き抜けた覚醒感を支持する意見も根強くありましたが、コールドプレイは既に世間的に高い評価を受けており、当サイトで改めてアワードを授与するまでもないということで最終的に入賞を逃し、優秀賞に落ち着くこととなりました。

REMとエルヴィス・コステロはいずれも当アワードでは新作を出すたびにエントリーされる常連ですが、今回もレベルの高い作品を発表し最終審査に残りました。審査員の評価も二分され審査は難航しました。いずれも混迷を深める世界にあって、直接性の復権という意味で象徴的な作品であり、史上初の同点3位に2作という案も出ましたが、深夜に及ぶ議論の結果、REMのシリアスさよりコステロの直情を買うとの意見が優勢となり、苦渋の選択ではありますがREMが入賞から洩れ、エルヴィス・コステロの3位が決まりました。

優秀賞には3位争いから惜しくも洩れたREM、コールドプレイ。また選外になりましたがニック・ケイヴ、ポール・ウェラー、ラスト・シャドウ・パペッツがこれに次ぐ評点を獲得したことを付け加えておきます。また、入手時期の関係で昨年のアワードにエントリーできなかったレディオヘッドのアルバムも評点ではこれらと同じでした。

今年は実力のある中堅、ベテランが力のこもった作品を発表した一方、これという新人が出なかった一年でした。また、満を持して発表されたプライマル・スクリーム、ザ・ヴァーヴの新作が今ひとつであったのは残念でした。またオアシスの新譜も悪くはないものの突破力に欠け、アワードにエントリーできませんでした。シーン全体を云々するのはアレかもしれませんが、エポックに欠ける一年ではなかったかと思います。

僕自身としてはCDの購入枚数をグッと絞り、特に新人の作品をレビュー買いすることはほとんどありませんでした。その中で数少ない冒険のひとつであったフラテリスが大当たりだったのはラッキーだったと思います。いい作品を選ぶためには、本来、その数倍の駄作や失敗作を聴く必要があるとも思いますが、そうした「肥やし」に費やす時間や心の許容量が少なくなっているのは事実。この辺をどう考えるか、それは2009年に持ち越されたテーマとなりました。

そんな訳で、個人的なロック体験としての記念すべき第10回 Silverboy Club Music Award、大賞はフラテリスの皆さんでした。それではまた今年の年末にお目にかかりましょう。




選考結果

大賞
HERE WE STAND The Fratellis
The Fratellis [選評] 何だ、こうやればよかったんじゃないかと思わせるあまりにも身も蓋もなく当たり前なロックと歌。キャッチーであること、批評的であること、硬質であること、すべてを同時に充たすにはこの一点しかないというポイントを的確に突く名作。聴いて楽しいということが何より重要な作品。

[評点] 8松
 
2位
MELODIA The Vines
The Vines [選評] ヘヴィでありながら軽快。短い時間でクルクルとめまぐるしく展開して行く雑多な曲群を背後から統合する強いモメントはクレイグ・ニコルズの純粋な才能しかあり得ない。あっという間に終わってしまう30分強のアルバムだが、時間の感覚を自在に伸縮させるマジックは既に大物だ。

[評点] 8竹
 
3位
MOMOFUKU Elvis Costello & The Imposters
Elvis Costello & The Imposters [選評] お湯をかけたら出来上がり。直情のみで鳴らされるインスタント・ロックの強さが心地よい。21世紀に入ってリリースされたコステロのアルバムの中では最強かも。スティーヴ・ナイーヴのあまりにバカバカしいヒョロヒョロ・シンセも嬉しい。でも曲の作りこみは確実にコステロの最前線。

[評点] 8竹
 
優秀賞 (評点2位・順不同)
ACCELERATE R.E.M.
VIVA LA VIDA OR DEATH AND ALL HIS FRIENDS Coldplay

[評点] 8竹



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