logo Silverboy Club Music Award 2005


1年間のご無沙汰でした。2005年も押し詰まり、毎年恒例の Silverboy Club Music Award の時期となりました。今年1年間にリリースされ、当サイトでレビューしたアルバムの中から評価の高かったものを総括して発表するというこのアワードも今年で第7回を迎えました。正直言ってこんなに続くとは思ってませんでしたが、過去の受賞作を見ると、それなりに納得性があったりして面白いですね。では、権威ある Silverboy Club Music Award 2005、早速発表を進めて参りましょう。

まず、今年の新譜レビューで最高の評価を獲得したのはゴメス・ザ・ヒットマンのアルバム「ripple」でした。高い文学性と静謐さをたたえた丁寧な音作りで日本のポップスの一つの達成となるアルバムではありますが、彼らの場合、僕のごく個人的な思い入れが反映した部分が大きく、また、2003年にもアルバム「omni」で次点を獲得していることもあり、今回は2003年のココナツ・バンクと同様、審査員特別賞の受賞となりました。おめでとうございます。ゴメス・ザ・ヒットマンの山田稔明さん、これを読んでいたら喜びのコメントをお願いします。

さて、それ以外のアルバムの中で今年最も評価の高かったものはコーラルとポール・ウェラーでした。長時間に渡る議論の結果、2005年の輝く Silverboy Club Music Award は、ポール・ウェラーさんに授与されることとなりました。パチパチ。おめでとうございます。ポール・ウェラーさん、これをご覧でしたら是非コメントをお願いします。

審査では若手の有望株であるコーラルの健闘を高く評価する声も強かったのですが、これまでソロ作ではアワードに顔を出していなかったポール・ウェラーが今作で奪還した直接性を買う声が最終的には大勢を占めました。当サイトではポール・ウェラーに期待するあまり、これまで採点が辛くなりがちで、2000年の「HELIOCENTRIC」、2002年の「ILLUMINATION」ともに入賞を逃してきた経緯があります。今回はその汚名を雪いで余りある力作ということで見事大賞の受賞となりました。

次点にはコーラルが選ばれました。ロックンロール・リバイバルやフランツに代表される大衆ポップ路線がシーンの主流を占める中で、XTCやモノクローム・セット、キング・オブ・ルクセンブルグ、スーパー・ファリー・アニマルズなどのねじくれたポップ・センスを継承する彼らのアルバムが高い評価を受けたことは特筆すべきでしょう。3作目となりますが、非常に緩急の利いた力作です。今回は惜しくも次点となりましたが今後の活躍が期待されます。

さて、第3位もまた同点でダヴズ、ステレオフォニックス、ホワイト・ストライプスが並ぶ激戦となりました。こちらもホットな議論が戦わされましたが、この中で世間的には最も評価の低いであろうダヴズが3位を獲得することになりました。

まずホワイト・ストライプスは何もここで3位をやらなくてもあちこちでいろいろほめてもらえるだろうということで敢えて道を譲った形となりました。アメリカのバンドだということも当サイトでは不利に働いたという指摘もありました。

ステレオフォニックスとダヴズは僅差でしたが、ステレオフォニックスは前作がよすぎたとの声が聞かれました。これに対しダヴズは派手さはないもののコンスタントに熱のこもった力作を発表し続けていることが評価されました。無愛想な男臭さというか寡黙なロックとしてある種の美意識を貫徹したアルバムだと言えるでしょう。

選外とはなりましたが、ベック、ニュー・オーダー、オアシス、ティーンエイジ・ファンクラブ、スーパーグラスなどの健闘も光りました。残念だったのはスーパー・ファリー・アニマルズの新作が今ひとつ緩いものだったこと、そしてコールドプレイがまるでダメだったことです。フランツは悪くなかったけど僕がここで何か書くまでもないでしょう。

今年は年始の誓い通り、CDの購入をかなり手控えました。「最近の買い物」のリストを見ても、2004年は58枚だった購入アルバムが、今年は41枚に減りました。その代わりに「ディスコグラフィ・レビュー」をスタートして、手持ちのCDをよく聴き返した1年だったと思います。必然的に新譜レビューは、そのアルバムがそうした過去の名作と比べていったいどれくらいの位置にあるのか、3年後、5年後にディスコグラフィとしてレビューするときにどんな評価を受けるのかということを考えざるを得ませんでしたし、その結果として評価がかなり厳しくなる傾向がありました。

雑誌で大々的に取り上げられている新人バンドのアルバムを買うことはほとんどなくなりました。それがいいことなのか悪いことなのかよく分かりませんが、まあ、自分でカネを出して買うCDなので、正しいか正しくないかより、聴きたいものを買って聴くという考え方でいいと思っています。新しいものも聴きたくなったら買えばいい、くらいの感じで。魔が差して買ってしまったサブウェイズはつまらなかったし。

そんな訳で、個人的なロック体験としての第7回Silverboy Club Music Award、大賞はポール・ウェラーさんでした。それではまた来年お目にかかりましょう。




選考結果

大賞
AS IS NOW Paul Weller
Paul Weller [選評] いい年をしたオヤジがいまだにロックを鳴らし続けることの意味は何か。常に真摯であり続けるが故にその重い問いを正面から背負わざるを得ない男、ポール・ウェラー。ロックという音楽の不格好さを正面から引き受けることでカッコよさに転化できることを証明して見せた、これはスタカン以後のマイルストーン。

[評点] 8竹
 
2位
THE INVISIBLE INVASION The Coral
The Coral [選評] ポップとは決して分かりやすいということと同義ではない。情緒的な泣きのツボを突いて泣かせる安易な音楽は掃いて捨てるほどあるが、痛いようなかゆいような微妙な感情のスイッチを押して、気がついたら涙がこぼれていたというのが本当のポップだろう。間口と奥行きを兼ね備えたポップの力、音楽の力。

[評点] 8竹
 
3位
SOME CITIES Doves
Doves [選評] グワーンと来てグルグル回る音像のトリップ感。ロックなのにグルーヴィ、妙にこもった音質はCCCDだからじゃなく、おそらく彼らの美意識だろう。ストイックで寡黙なのにグイグイとバンドを引っ張って行くベースが心地よい。ダンス、ソウルの影響をギター・ロックに昇華した力作。アルバム後半の失速が悔やまれる。

[評点] 8梅
 
優秀賞 (評点4位・順不同)
LANGUAGE. SEX. VIOLENCE. OTHER? Stereophonics
GET BEHIND ME SATAN The White Stripes

[評点] 8梅
 
審査員特別賞
RIPPLE Gomes The Hitman
Gomes The Hitman [選評] アクティブだった前作から一転、静謐な音世界の中に、ひとつひとつ宝石のように選ばれ磨かれた言葉が輝くアルバムとなった。乱造された粗雑な言葉が自らの寿命をすり減らす世界にあって、言葉が持つ本当の強さを寄り添うメロディやリズムが発見して行くようなこの生真面目さは失われてはならないもの。名作だ。

[評点] 8松



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