logo Silverboy Club Music Award 2004


さて、第6回を迎えた輝くSilverboy Club Music Award、今年も発表の季節がやって参りました。このアワードは、今年1年にリリースされたレコードの中から、当サイトでレビューし、高得点を得たものを年間を通じて集計、発表するというものです。シャレで始めた割りに長続きしておりまして、そろそろ入賞者からマジでコメントが寄せられないものだろうかと考えている今日この頃です。では、早速発表を進めて参りましょう。

さて、今年は集計の結果、最高評点を獲得した作品が3枚並ぶという結果になりました。順不同で申し上げますと、エルビス・コステロ、R.E.M.、そしてソニック・ユースの皆さんです。今年の選考はこの3枚をどう評価するかということを中心に議論が進められました。

では、まず大賞の発表から参りましょう。この3枚のアルバムから選考の結果、輝く第6回 Silverboy Club Music Award、大賞の受賞者はR.E.M.の皆さんに決まりました。パチパチパチ。おめでとうございます。マイケル・スタイプさん、これをご覧でしたら悦びのコメントをお願いします。2位にはエルビス・コステロさん、3位はソニック・ユースの皆さんとなりました。こちらもおめでとうございました。

選考は激しい争いになりましたが、今日という時代相へのコミットメントという点で、やはりR.E.M.の新作を他の2作よりも高く評価するべきとの意見が最終的に強く、R.E.M.の皆さんが大賞を受賞されることになりました。R.E.M.の皆さんは本アワード実施前の98年にアルバム「UP」で評点3位を獲得、また2001年には「REVEAL」で評点4位に入っておられますが、今作はそれらの作品にも増してアルバム全編にみなぎる緊張感、普通のロックなのにR.E.M.以外ではあり得ない音楽そのものの強さ、そして今ここにある世界と直に向かい合うその背筋の伸び方という点で強い支持を得ました。ある意味、いいアルバムを出して当たり前という立場にありながら、それをさらに凌駕する新作を叩き出したことを賞賛する声が多かったことをお伝えしておきましょう。

惜しくも次点に泣いたコステロさんは、2002年にもアルバム「WHEN I WAS CRUEL」で2位に終わったことがあり、今作こそ大賞をと推す声も強かったのですが、敵が悪かったというべきか、またしても大賞を譲る結果となりました。前作「NORTH」があまりにアレだった訳ですが、今作では再び腰の入ったロックンロール・オヤジっぷりを見せつけてくれる結果となりました。多才なアーティストではありますが、それをロックンロールに還元したときの強さはもはや言うまでもなく、いずれ大賞を受賞する機会もあろうと期待されます。

さて、3位のソニック・ユースの皆さんも、同じく2002年にやはり今回と同じ3位を獲得しています。前作以来、オルタナだろうがノイズだろうが知ったことか的なロック作品のリリースが続いており、地獄を見た上で鳴らされる普通のロックの凄みみたいなものを体現しているという点で今回も高い評価を得ました。R.E.M.、コステロさんほどの一般性がないため後れをとった面は否めませんが、他ならぬソニック・ユースが21世紀に入ってこうしたアルバムをしっかりとリリースし続けていることの意味をもっと認識するべきであるという有力な意見もありました。実力はだれもが認めるところです。

評点4位には4枚のアルバムが入りましたが、顔ぶれはベテランが中心となりました。今年は年頭に無駄なCDは買わないぞという誓いを立て、旧譜や、あとは本当にこの人の新譜だから、というものだけを買っていたつもりだったんですが、夏頃からやはり若手の新譜にも色気が出てフランツ・ファーディナンドとかリバティーンズの新譜とか、つい手を出してしまった訳です。で、そうしたアルバムは影も形もない。

これは一つには僕の耳がもうオヤジ耳になって馴染んだ音以外は受け付けにくくなっているということもあるでしょう。しかし、世間で比較的評価の高いフランツ・ファーディナンドとかもやはり腹の据わり方とか覚悟とか世界なるものへのパースペクティブの持ち方という点で、若手には酷な高いものを求めるとどうしても僕の中では見劣りしてしまう。むしろ、もろジャムだったオーディナリー・ボーイズなんかの方が素直に楽しめたりして、我ながら複雑なものがありました。そういう訳で評点4位の中ではニック・ケイヴが印象的でした。その次のグループではキュアー、アッシュ、ウィルコといったところかな。

で、来年ですが、来年こそ買うCDをグッと絞って、手持ちのCDをしっかり聴き返します。レビューも新譜にこだわらず、いくつかの特定のアーティストをディスコグラフィ的に追いかける新企画を立ち上げようかなと思っています。その中で欠けている旧譜を少しずつ買い集めたり、どうしてもという人の新譜だけをきちんと選んで買うことで1年を過ごそうかと。去年も同じこと書いたけど、そうやって過ごした今年の前半がすごく気持ちよかったというのもあって、iPodの中身も一回見直そうかなあ。

そんな訳で、個人的なロック体験としての第6回Silverboy Club Music Award、大賞はR.E.M.の皆さんでした。それではまた来年お目にかかりましょう。




選考結果

大賞
AROUND THE SUN R.E.M.
R.E.M. [選評] R.E.M.でしかあり得ない一音一音の響き方。遠くまで見渡すためには、背筋を伸ばし顔を上げて目線を真っ直ぐに保たなければならない。自分がいかに足許ばかり見つめていたか、たかがロック・アルバムの1枚に教えられるのもそれがR.E.M.であればまた納得できる。骨格の歪みをすら矯正する世界への立ち向かい方。

[評点] 8松
 
2位
THE DELIVERY MAN Elvis Costello & The Imposters
Costello [選評] ベタベタのバラード、オペラ、オーケストラ、もう何でも好きにやってくれていい。5年に一度こういうアルバムを出してくれさえすれば。いや、もう出さなくてもいいと言ったって出さずにはいられない人だろうから心配は要らないのかも。初期衝動から遠く離れたオヤジの苛立ちがどうロックとして機能するかという見本。

[評点] 8松
 
3位
SONIC NURSE Sonic Youth
Sonic Youth [選評] 何でもかんでも「明るい」と「暗い」の二分法で片づけていた時代ならもちろん「暗い」音楽だが、「開かれた」と「閉じた」の価値軸なら間違いなく「開かれた」オルタナ。ソニック・ユースは初めから開かれていたのに、これまで僕たちが気づかなかっただけのことなのかもしれないと思わせるコミュニケーションへの意志。

[評点] 8松
 
優秀賞 (評点4位・順不同)
UP AT THE LAKE The Charlatans
ABBATOIR BLUES / THE LYRE OF ORPHEUS Nick Cave And The Bad Seeds
REAL GONE Tom Waits
HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB U2
[評点] 8竹



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