logo Silverboy Club Music Award 2003


皆さん、こんばんは、今年も「Silverboy Club Music Award」の季節がやってきました。このアワードは当サイトで今年一年の間にレビューしたアルバムの中から、評点の高かったものを集計して発表するという単純な企画です。これも今年で5回目だということで私としましても38歳にもなって年末の忙しいときに何やってるんだろうという感は否めませんがまあそんなことはどうでもよろしい。輝くSilverboy Club Music Award 2003、早速発表を進めて参りましょう。

さて、今年は大賞を発表する前にお知らせがあります。本来であれば今年レビューした新譜の中で最も評点の高かったものが機械的に大賞を受賞するんですが、集計の結果今年の評点は一位はココナツ・バンクのアルバム「ココナツ・バンク」であるということが判明しました。ご承知の通りこのアルバムは実質的に伊藤銀次のソロアルバムであり、伊藤銀次は我がサイトでは佐野元春と並んで「特別扱い」のアーティストです。そういうこともあって、アルバム「ココナツ・バンク」には審査員特別賞を贈呈することとし、選考対象からははずすことにしました。まずは審査員特別賞の発表でした。パチパチパチ。伊藤銀次さん、これをお読みでしたら是非コメントをお願いします。

さて、それではいよいよ大賞の発表です。輝く第5回 Silverboy Club Music Award、大賞の受賞者はシャックの皆さんに決まりました。パチパチパチ。おめでとうございます。シャックの皆さんは第1回である99年のアワードの時に大賞のトム・ウェイツさんと同評点を獲得しながら大賞を譲ったことがありましたが、今回は堂々の受賞となりました。おめでとうございます。マイケル・ヘッドさん、ご覧でしたら喜びのコメントをお願いします。

アルバム「...HERE'S TOM WITH THE WEATHER」は前作「H.M.S. FABLE」と比べて地味な作品であり、世間的にもあまり話題になりませんでした。いくつかのレビューでも必ずしも高い評価は得られていなかったと思います。審査員の間からもこの人たち特有の華麗でさわやかな疾走感に欠けているのではないかという声があったことは事実です。しかしながらむしろここではマイケル・ヘッドがそうした疾走感なしに成し遂げたソングライティングの完成度を評価したいとの意見が最終的に大勢を占め、栄えある受賞に至りました。

次点にはゴメス・ザ・ヒットマンの「OMNI」が選ばれました。邦楽アルバムとしては初めての受賞です。これも銀次と同じでちょっとマイ・ブーム的に盛り上がってしまった面は否めず対象外とするべきではないかという意見もありましたが、だからといってこのアルバムの価値が損なわれるものではないということで無事に評点通り第2位獲得となりました。曲のよさ、アレンジのよさ、音のよさ、そして歌詞の高い文学性とツボにはまった傑作と申せましょう。山田稔明さん、コメントお願いします。

第3位は評点同点となった8作品からの選考となりました。甲乙つけ難いとの意見も多い中で敢えて選ぶとすればということでトラヴィスの「12 MEMORIES」が選ばれました。アルバム全体を貫くテンションの高さ、厳しさが評価されたものです。前2作の高評価もベースとなっており、大橋巨泉ふうに言えば「合わせ技で一本」的側面もやや含まれています。

トラヴィスと第3位を争った残りの7作品は優秀賞となります。トラヴィスと最後まで熾烈な3位争いをしたのはステレオフォニックスとストロークス。ステレオフォニックスはイギリスのバンドらしからぬ骨の太さと泣きの入り具合の絶妙なバランスが、ストロークスはデビュー作から格段に間口を広げてポップに進化しながらもロックの初期衝動的「カッコよさ」を失わない驚異の成長ぶりが、それぞれ審査員から絶賛を受けました。

ベルセバ、スーパー・ファーリー・アニマルズ、レディオヘッドといった常連の作品もレベルの高いできでした。総評としては以外と堅実にいいアルバムが出た1年だったかなと思います。ストロークスに代表されるロックンロール・ブームはどうでもよくて、というのはそのストロークス自身がもう軽く「次」へ行っちゃってるからね。リバティーンズとかどうすんのかな。

僕自身としては今年は何かに憑かれたようにCDを買いまくった1年でした。数えてみたところ旧譜も合わせて90枚以上のCDを買い漁ってます。1枚平均2,000円としても18万円以上です。iPod買ったのが大きかったのかもしれませんが、ドイツ時代のカタログ買いから帰国後はショップ買いに移行しており、お店に行くとついあれもこれも買ってしまうということなんじゃないかと思います。これだけあるとどうしてもきちんと聴きこまないうちに印象で書いてしまったレビューとかもあり今読むと冷や汗が出ます。黙って削除してしまいたいくらいです。反省してます。すみません。でもiPodのおかげでどのアルバムも最低5回は聴いてから書けるようにはなりました。

来年は実は買うCDをグッと絞ろうかなと思ってます。本当にこれは買わねば、というもの以外簡単には買わないということで。なぜかというと、iPodに手持ちの旧譜音源を流しこみながら、オレってこんなにいいCDいっぱい持ってるのに全然聴いてないなあ、と思ったからです。持ち腐れの宝をこの際真面目に聴きこんでみようと思った訳です。自分の中の評価軸をもう一度しっかり見定めたいというか、音楽の木をひょろひょろ上に伸ばすばかりでなくその幹をもうちょっと太くしたいというか、まあそんな感じです。

そんな訳で、個人的なロック体験としての第5回 Silverboy Club Music Award 大賞はシャックの皆さんでした。それではまた来年お目にかかりましょう。




選考結果

大賞
...HERE'S TOM WITH THE WEATHER Shack
Shack [選評] 曲というのはこうやって書くのだという見本みたいなアルバム。ペイル・ファウンテンズから綿々と続いてきたマイケル・ヘッドの音楽の旅がたどり着いたひとつの静謐な境地。ただメロディの起伏の中だけに彼自身の真実を見出そうとした困難な試みの結果がここにあると言ってよい。静かな夜に聴きたい1枚だ。

[評点] 9梅
 
2位
OMNI Gomes The Hitman
Gomes The Hitman [選評] 自分の中にある「寄りかかり」のようなものを厳しく問い直したからこそ歌うことのできた言葉の強さ、明晰さに打たれる。サウンドも驚くほどクリア、文句のつけどころがないほど突如として完成されてしまった歴史に残る名作。文学性とは「難しい言葉遣い」ではなく、ありふれた言葉を更新する力のこと。

[評点] 8松
 
3位
12 MEMORIES Travis
Travis [選評] 一枚のアルバムに詰めこむことのできるテンションをどこまで上げることができるかというテーマに飽くなき挑戦を続けるトラヴィス。前作、前々作でも既にかなり密度の高いアルバムを作り上げたが今作ではもうかなり暴力的なまでの緊張感。息を詰めたままひたすら高まって行く窒息寸前の危険なアルバムだ。

[評点] 8竹
 
優秀賞 (評点4位・順不同)
JETSTREAM LOVERS Captain Soul
HAIL TO THE THIEF Radiohead
YOU GOTTA GO THERE TO COME BACK Stereophonics
PHANTOM POWER Super Furry Animals
MAGIC AND MEDICINE The Coral
DEAR CATASTROPHE WAITRESS Belle & Sebastian
ROOM ON FIRE The Strokes

[評点] 8竹
 
審査員特別賞
ココナツ・バンク ココナツ・バンク
ココナツ・バンク [選評] ウェルカムバック、銀次。僕が10年間待ち続けたのはこれだった。ココナツ・バンクという「仕掛け」によって銀次の資質が絶妙にセルフ・コントロールされた結果、このアルバムは実に輪郭のくっきりしたポップ・アルバムになった。細い声のボーカルに僕は正直泣いた。21世紀型伊藤銀次の原点たり得る作品。

[評点] 9竹



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