役に立つドイツ旅行のポイント クルマについて ●ドイツでクルマを運転するためにまず必要なのは当たり前ですが免許証です。ただし日本の免許証で直接運転することはできません。この辺は聞いた話ですが、日本にあるドイツ領事館なり大使館で、日本の免許証の翻訳証明をドイツ語で作ってもらう必要があると思います。確認して下さい。これも聞いた話ですが、日本の免許証センターで作ってくれる国際免許証はドイツでは通用しないことになっています(ドイツがその条約に加盟していないので)。もっとも実際には検問に引っかかっても国際免許証を見せたら大丈夫だったということはあるかもしれません。でもそれは単に「大目に見てもらった」というだけのことです。それに国際免許証でレンタカーを借りられるかという問題もあります。経験者のレポートを待ちたいところです。
●レンタカーの借り方についてはしかるべきガイドブックにきちんと載っていることと思いますが、気をつけた方がいいのは、ドイツのレンタカーはまず間違いなくマニュアル・シフトだということです。オートマチックが希望であれば予約の段階でよっぽどきちんと念を押しておいた方がいいでしょう。当日にカウンターでゴネてみたところでないものはないのです。僕の知る人で普段はオートマしか運転しないのにレンタカー屋に行ってみたらマニュアルしかなく、仕方なくマニュアル車に乗り込んでみたがやはり発進できなくて、見かねた(あるいは不安に思った)レンタカー屋の人が隣の営業所からオートマを取り寄せてくれたという話もありますが、そこまでは普通期待できません。事前にきちんと手配するか、マニュアルを運転できる技量をしっかり身につけておきましょう。 ●で、無事にクルマを手に入れたあなたは公道に出る訳ですが、ヨーロッパはイギリスを除いてクルマは右側通行です。慣れるまでは十分気をつけて下さい。特に危ないのは交差点を曲がったときです。思わず対向車線(左側)に入りそうになります。ハンドルは左です。ペダルの位置は右ハンドル車と同じ(左からクラッチ、ブレーキ、アクセル)ですが、ワイパーはハンドルの右に、ウィンカーは左についています。ここだけの話ですが僕もドイツに来たばかりの頃ウィンカーを出そうとしてワイパーを動かしたことが何度かあります。まあ実害はありません。 ●交通標識はだいたい日本と変わりません。行き先・方向を書いた道路標示も親切です。青い標示は高速道路を、黄色い標示は国道を表しています。その辺はドイツ人はきっちりしています。 ●高速道路はアウトバーンといいます。無料です。速度制限は原則としてありません。ただし片側2車線とか大都市の近郊とか区間によっては120kmとか130kmとかの制限があるところもありますから標識に注意して下さい。いちばん右端の車線が遅いクルマ用です。慣れないうちは右端を走っている方が無難かもしれません。ただし自分から見て左側の車線を走っているクルマを右側の車線から追い抜くことは特別な場合を除いて禁止されています。スピードを出すときはきちんと左側の車線に移って下さい。ただ左端の車線は時折おっそろしいスピードで走り抜けて行くポルシェ野郎がいます。時速200kmは出ていることがあります。そういうクルマの目の前に飛び出すと大変危険ですから、左側の車線に出るときにはそういうヤツがいないか十分後方を確認して下さい。遠くに見えてもすごい勢いで近づいてきます。それから左端の車線を走り続けるときも、後方から近づいてくる車両には十分注意しておく必要があります。さもないと後ろからガンガンあおられて肝を冷やします。だいたいアウトバーンでは右側の車線が時速100km〜120km、左側は時速140km〜150kmくらいで流れています。無理する必要はありませんが、ひとりだけゆっくり走るより流れに乗った方が安全ということはありますからがんばって下さい。 ●ドイツのガソリン・スタンドはどこもセルフ・サービスです。元気のいい兄ちゃんもミニスカートの姉ちゃんもいません。スタンドに着くとあなたはまずクルマの給油口をどうやって開けるか悩むことになりますが、これはクルマによって簡単に開くもの、運転席でレバーを引くものなど千差万別ですからがんばって下さいとしか言いようがありません。で、ポンプのノズルを給油口に突っ込んでレバーを引く訳ですが、このときガソリンのタイプを間違うと面倒なことになるので気をつけましょう。一般車は「Bleifrei(ブライフライ、無鉛の意)」と表示されたガソリンを入れることになっています。だいたいのスタンドでは単純な「Bleifrei」の他に「Bleifrei Super」「Bleifrei Super Plus」などもありますが、これらはいわゆるハイオクです。問題ありません。「Diesel」と表示されているのは軽油です。ディーゼル車に乗っている奇特な人以外は入れてはいけません。かつては「Verbleit(有鉛)」というガソリンもありましたが、今ではドイツでは有鉛車は禁止された建て前になっているため売られていません。 ●ノズルのレバーには小さな金具がついていてこれを引っかけるとレバーをずっと握っていなくても満タンになるまで勝手に給油してくれます。満タンになると「カチン」と音がして給油が止まりますからノズルを戻し、自分が給油したポンプの番号をチェックしてレジに行きましょう。おっとその前に給油口のフタを閉めておいた方がいいですね。レジでポンプの番号を言うと料金を教えてくれますから支払をします。これで終わりです。慣れると全然どうってことないけど最初は不安です。心配な人は日本でセルフのスタンドを探して練習するか、兄ちゃんが給油してくれるときに車外に出てよく観察でもしておいてはどうでしょうか。 ●市街地を走るときにもちょっとした注意が必要です。まず、信号のついていない交差点での優先関係には気を遣わなければなりません。道幅や標識などからして優先関係のはっきりしない交差点では、向かって右側から出てきたクルマが優先です。日本では左方通行車優先ですがドイツではその逆ですから注意しましょう。従って信号のない交差点では右から来るクルマに特に気をつけて下さい。逆に自分が優先の時はむやみに止まってはいけません。当然優先で行くものだと思っていた後続車に追突されるおそれがあるからです。なんでも止まって譲ればいいというものではないということは理解しておいて下さい。信号のない交差点でも優先関係を示す標識があるときは当然それに従います。赤い縁取りのある白い逆三角形(日本の「徐行」の標識に似ているが文字は何もない)は劣後道路のサインです。道を譲って下さい。白い縁取りのある黄色の正方形が45度斜めに傾いているのは優先道路のサインです。先に行って下さい。 ●次に、ドイツでは路面電車がたくさん走っています。片側2車線以上の道路では路面電車の線路は道路の中央よりの車線に敷設されているのが普通ですが、停留所は歩道に設けられているということがあります。このとき、路面電車が乗客の乗降のために停留所に停車すると、その後ろまたは並行して走っていたクルマはこれに合わせて停止しなければなりません。これはもちろん車道を横断して電車に乗り降りする人たちをひき殺さないようにするためです。電車と歩道の間の車線を走り抜けようとしてはいけません。極めて危険です。停留所が道路の中の島のようになっている場合、言い換えれば乗降客が直接車道を横切って乗り降りする必要がないところではこの限りではありません。 ●ドイツには少ないですがヨーロッパにはロータリーというものがあります。これは信号なしで交通をさばくための知恵ですが慣れないと結構恐いです。イギリスを除くヨーロッパ諸国ではロータリーは反時計回りで流れています。特別な標識のない限りロータリーは中を回っているクルマが優先でロータリーに入るクルマが劣後です。左からクルマが来ないのを確かめてからロータリーに入ります。どの道に出て行くのかは入る前によく確認しておいて、回りながら「90度」「180度」「270度」とか「1本目」「2本目」「3本目」とか数えながら回らないと分からなくなって最初来た道に戻ってしまったりします。これは結構情けないです。まあ、出るべき道を通りすぎてしまったらもう1周すればいいだけのことですからうろたえることもないでしょうが。ただ、あんまり何周も回っていると目が回ります。ロータリーの中が複数車線に分かれているときは外に出ようとするクルマとまだまだ回り続けようとするクルマが交錯しやすいので、地面に書かれた車線や矢印に注意して下さい。 ●あまり見かけませんが、特に標識がない限り踏切で一旦停止する必要はありません。急に止まると追突されますから気をつけましょう。 ●郊外の国道は確か時速100kmが制限速度だったかと思いますが、これが町の中に入ると急に50km制限になります。町の名前を書いた黄色い標識が現れたらそこからは町の中だというサインですからすぐにスピードを落として下さい。町を抜けると今度は同じ標識に赤い斜線が引いてあります。町を出ましたよというサインです。ドイツ人はおもむろにスピードを上げます。ロマンチック街道なんかはそうやって次から次へと小さい町が現れるので、スピードを上げたり落としたりの繰り返しです。面倒くさいですが特に町の中でスピードを落とすのは間違いなく実行して下さい。 ●あと、ドイツの信号は赤から青になるときに、いったん黄色が点ります。正確に言うと、「赤→赤+黄→青」と変わる訳です。従って、交差点に接近中のクルマからは、「ああ、もうすぐ青になるな」というのが分かります。これは何を意味するかというと、信号が青に変わった瞬間に、そのまま速度を緩めず(例えば時速60kmくらいで)いきなり交差点に飛び込んでくる車両がかなり高い確率であり得るということです。これは逆に言うと赤に変わる直前の黄信号で無理矢理交差点に進入した場合、そのように青になった瞬間に交差点に飛び込んできたクルマと衝突する可能性が十分あるということですね。僕は大阪市内で社用車を運転した経験もあり、交通マナーはあまりいい方ではないと自認していますが、ドイツではそういう事情で信号はかなり厳格に守ることにしています。 ●駐車場についても説明しておきます。たいていの街では路上のパーキング・スペース、公共・民間の駐車場(主に立体または地下)が十分確保されており、場所の良し悪しは別にして、街の中でも一応安心してクルマを停めることができます。駐車場のマークは青地に白の「P」。路上のパーキング・メーターでは近くにチケットの販売機がありますからチケットを買ってダッシュボードの上、外から見えるところに置いておきましょう。入口と出口に遮断機のある駐車場では、入場の時にパーク・チケットを機械から取ります。出るときにはクルマに戻る前にレジもしくは精算機でチケットを精算し、精算済みのチケットを遮断機の機械に差し込むやり方がほとんどです。これをやらずにいきなりクルマに乗って出口に向かうと、遮断機のところで立ち往生します。なぜなら遮断機には精算機能はないからです。気をつけましょう。 ●という訳で、これがドイツでクルマにまつわるエトセトラな訳ですが、参考になったでしょうか。どこかにも書きましたがクルマの運転のポイントは操作技能ではなく状況判断です。それは情報収集と自己表現であり、コミュニケーションとネゴシエーションです。がんばって下さい。それから是非、ドイツで事故を起こしてひどい目にあった人のレポートも聞きたいです。それでは皆さん、ごきげんよう。グーテ・ファート、チュース!! 1999-2004 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |