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99年8月14日(土)

●今年の夏休みはポルトガルの南岸、アルガーヴ地方だ。国際空港のあるファロから西へ40kmほど行ったところにあるリゾート・ホテルで1週間、今回はあまり忙しく観光せずにビーチやプールサイドでボケーっとするのが目的である。
●デュッセルドルフからは飛行機で3時間だが、ポルトガルは大陸では唯一時差のある国なので時計を1時間戻す。ファロ空港では荷物が出てくるまで随分待たされた上に、バギーが手荒い扱いを受けたらしく部品が一部破損していた。まあ致命的な壊れ方でもないし、どっちみちもうガタのきてるバギーではあるんだけどね。飛行機に乗るときにはバギーの扱いがいつも悩みのタネ。
●今回はレンタカー付のパックなので、空港からレンタカー会社のマイクロバスに詰めこまれて1kmほど離れたところにあるツアー客専用のレンタカー・ステーションへ。ここでオペル・コルサという小さなハッチ・バックをあてがわれて走り出したが、午後6時過ぎとはいえ快晴の陽射しはまだまだ全然きつい。見知らぬ夜道を走るよりマシとはいうものの、エアコンなんかついている訳もなく、汗だくでやたら縮尺の小さなポルトガル全図と旅行会社の道順案内(当然ドイツ語)だけを頼りに走る。途中で高速道路が途切れて一般国道になり、曲がり角を通り過ぎて戻ったりもしたが、まあ、何とか1時間弱で到着。
●今回はちょっと張りこんだ高級ホテルだけあって、部屋は10畳ほどのリビングに6畳ほどの寝室、洗面台の二つあるバスルームと別室のトイレ(ビデ付)、6畳ほどのベランダもついて、大学時代のワンルームなんかよりよっぽど広い。建物は真新しく明るいし、テレビ、ミニバー、エアコン完備、ウェルカム・フルーツも気前良くカゴに盛られていて文句なし。

99年8月15日(日)

●ここはホテルと言っても広いフロントのあるアメリカ式の高層ホテルではなく、起伏のある広い敷地にレセプション、レストラン、いくつもの客室棟、プールなどが点在しているバンガローというかヴィラである。建物は3階建てまでで緑も多く、別荘地かキャンプ場にでもいるようで、構内図を片手にオリエンテーリングでもできそうな雰囲気である。
●朝食室はフィットネス・センターの2階。ビュッフェだがチョイスは豊富でスモーク・サーモンまである。豪華である。ゆで卵がちょっと固ゆでになっちゃってるのが難点だがジュースはフレッシュだし。ところでゆで卵はエッグ・スタンドに立てて、てっぺんの4分の1か5分の1だけをナイフでフタ状に切り取ったらスプーンで中身をすくって食べるのが正しい食べ方(でなきゃエッグ・スタンドなんて意味ないもんね)。そのためにもゆで方は温泉タマゴより心持ち固めくらいに仕上げて欲しいものです。でも不幸にして今回のように固ゆでになっちゃってるときは面倒くさいからバリバリ殻むいて食べちゃいましょう。
●で、朝メシ食べたらプールへ。プールは敷地の3カ所にあって、最大のプールは嬉しいことに我々の部屋のすぐ前。塩水、真水、温水と3面あり、大きな滝が健康ランドの「打たせ湯」みたいに流れ出してプールに注いでいる。豪華である。しかしながらここは上品なリゾートであって日本のイモの子プールではないので泳いでいるのは子供だけ。大人はプールサイドの寝椅子で本なんか読みながら肌を焼き、たまにジャブンと飛び込んでまた読書って感じ。
●僕も持参したピンチョンの「ヴァインランド」を読みながら暑くなってくるとちょっと泳いでまた焼いて。そういえば去年はカナリアでバラードの「クラッシュ」を読んだんだった。でも「ヴァインランド」は1週間じゃ読めそうもないぞ。天気は雲ひとつない快晴だが湿気がまったくないのでたまに風がそよぐと涼しい。極楽である。この解放感のために1年間働くというドイツ人のホリデー・マニアックも理解できる気がする。
●ところでこのホテルの唯一の難点は満足な売店がないこと。飲み物もルーム・サービスで持ってきてはくれるが、水がなくなるたびに人を呼びつけるのは中産階級出身の僕には気が引ける。せっかくレンタカーもあることだし、レセプションで地図をもらって最寄りの街アルマサン・デ・ペラに夕方出かけた。
●ラテン系の交通秩序に最初は戸惑いもあったが、大阪市内だと思えばどうってことない。関西はラテンだったんだと今にして思う。適当な駐車場というか空き地にクルマを停めてスーパーで買い物。小さな街だが、ビーチもあって結構観光客で賑わっている。取りあえず水、ジュース、ビール、サンオイル、砂遊びセットを買って帰ったが、今度は土産物でも買いに出てこよう。流れるボールペンを2本ゲット。

99年8月16日(月)

●今日はビーチ。レストランの脇から崖の階段を下って行くと、プライベート・ビーチに出る。係のお兄さんが日除けとデッキ・チェアを用意してくれるところがぜいたく。相変わらず雲ひとつない快晴だが、結構波は高く水も冷たい。ここはもうジブラルタルの西だから地中海ではなく大西洋だ。盆も過ぎたが大西洋にはクラゲは出るのか。ともかくここでも水とたわむれているのは主に子供で、大人は読書か昼寝。
●両側を切り立った崖に遮られた秘密の入り江という感じのビーチで、我々のホテルから降りて行く以外には他に何カ所かの入口があるだけなのだろう。長さは数百メートルくらいだろうか。それほど人も多くなく、波の音を聞きながらグリーンと白のしま模様の日除けの下に寝そべる。ニック・ロウの「I Knew The Bride」かなんか流れてきたら似合いそうである(そんなCMあったよね)。極楽、極楽。
●残念なことにホテルの宿泊客は家族連れか年配の夫婦が多く、南仏やカナリアで頻繁に目にした価値あるピチピチのトップレスにはここではほとんどお目にかかれない。来年はマジョルカかイビザにでも行くか。ホテル客専用の質素な海の家では昼には炭火で焼いたチキンやイワシを出すようだ。「ヴァインランド」、読んではいるけどなかなか進まないぞ。

99年8月17日(火)

●今回も朝夕食込みのパックなので、夕食はホテル内のレストランで食べることになるんだが、このレストランが「高級」を意味する「ルーショ」ランクの格調高いところである。ここに毎日自動的にテーブルが予約されている訳だ(午後8時開店というのは何とかならないのか)。だが家族連れの泊まり客が多いので、ルーショだろうが何だろうがあっちで赤ん坊がギャーと泣いたかと思うとこっちでは走り回っている子供もいて雰囲気ぶちこわし。外からわざわざこのレストランを予約して愛を語りに来たカップルには可哀想な話である。
●メニューは、前菜・スープから一品、魚一品、肉一品、デザートというコースになっているが、これをフルにこなすと午後10時なっても食事が終わらない上にお腹もいっぱいになるので、2日目からは魚か肉のどちらかだけにすることにした。それでもデザートからエスプレッソまで行くと10時前にはなる。子供の集中力が切れるのも無理はない。
●肝心の味の方だがさすがに◎。いいものを食べたという感じ。せっかくなんだからもうちょっと地元の素朴な魚料理なんかもお願いしますよという感じもしないではないがここでそれを言うのは失礼というかぜいたくというものだろう。
●ところでこのレストランのドレス・コードは、Tシャツ、半パン(バミューダ含む)、サンダル禁止、ネクタイは省略可というもの。さすがに泊まり客はみんな襟のあるシャツを持参している。半袖のシャツかポロに綿パンというのが標準的な格好。もちろん僕も半袖のシャツ、ポロ、それにチノパンを持ってきた。ヨーロッパも5年目だからこの辺の加減は少しずつ身についてきた。Tシャツしかないと困るぜ、これは。

99年8月18日(水)

●せっかくクルマも借りてるんだからということで軽くドライブ。目的地は「歩き方」に載ってるいちばん近い街、アルブフェイラだ。距離的には4〜50kmくらいだろうか。国道を走って1時間弱で着いたが車を停める場所がない。海に開けた旧市街は道も狭く数少ない駐車スペースは既にいっぱい。迷路のような街を2周ほどしたが成果もなく、仕方なく後背の坂の上の駐車場にようやく空きを見つけた。
●街は昔ながらの漁村がここ20年ほどのリゾート化で観光地に化けたようなところ。路地や広場には土産物屋や観光客相手のレストラン、カフェが軒を並べ、水着姿の観光客が大勢うろついている。坂を下りて広場の土産物屋で流れるボールペンをゲット。ツーリスト・インフォメーションで地図をもらったが、係のオヤジ、ちょっと態度悪かったぞ、おい。
●ビーチはイモの子を洗うような賑わいである。関西で言えば須磨の海という感じ。首都圏だとどこなんだろうね。まあ我々はここで泳ぐ必要も焼く必要もないから眺めるだけなんだけど。ホテルのビーチに比べると波も穏やかで水の色もきれい。坂の多い旧市街をぶらぶらと散歩した。
●昼になったところで目についたレストランへ。この地方では何よりこれを食えと教わってきたイワシの炭火焼きを注文する。こればっかりはホテルじゃ食えないもんね。友達のアドバイスに従ってしょうゆも持参した。中くらいのイワシが4尾、こんがりとあぶられてほどよく脂も滴っている。ナイフとフォークで身をはずし(割り箸も持って来るんだったなあと思った)、しょうゆをかけて食べたが間違いなく旨い。しかも安い。毎日これでも構わない。

99年8月19日(木)

●昨日晩メシを食っている途中で激烈に胃が痛くなって、サーロイン・ステーキにほとんど手もつけずに残してしまった。もったいない。部屋に帰ってアスピリンを飲んだら治っちゃったんだけど、あれは何だったんだ。たぶんしつこい食事が続いて胃が弱っているところに、いきなり鮭のカルパッチョにレモンをガンガン絞って食べたりしたのがよくなかったのか。
●今日はアルマサン・デ・ペラの街に再び出かけて、土産物屋を何軒かうろつきながら流れるボールペン3本、Tシャツ、タイル等を買った。最近旅行に出かけても買うものは決まっていて、リゾートではまずTシャツ。今回もプールサイドで着てるTシャツはギリシャ、コート・ダジュール、モナコ、カナリア、ソレント、カプリと、これまで行ったところで買ったものばかり。こんなにあっちこっち行ってますよ〜とひそかに主張している訳である。
●それからもちろん流れるボールペン。今回はこれで6本になった。家にはもう100本を超えるボールペンが集まっている。それから南欧ではよくある飾りタイル。いずれにしても買うのは自分たちのためのお土産ばかり。だれかのために義務的にお土産を探さなくていいというのは本当にいい。今回は銅版画は買ってないけどリゾートだから構わない。リビングの壁もそろそろ額を飾る場所が少なくなってきたし。

99年8月20日(金)

●今日の晩メシはプールサイドのグリルでバーベキュー。生バンドの演奏が流れる中、屋台形式の上品なバイキングでエビやイワシの炭火焼き、ステーキなどが取り放題というかもらい放題。サラダはもちろんビュッフェになってるし、スープもデザートも好きなだけ食べてよし。こういうとき白人の食欲はすごい。我々なんて完全な割り勘負けである。イワシも肉の串焼きも美味しかった。自分たちのペースで好きに食べられるのがいい。
●滞在中ずっと天気は快晴で、テラスで食べる晩メシの途中で日が暮れて行くというのがパターンだったが、その日暮れも心なしか毎日早くなって行くようで、日が暮れてからの風は確実に涼しくなった。今日なんか晩メシにジャケット着て出てちょうどいいくらいだもんね。漁船の浮かぶ海が夕日に染まるのを見ながら食べる晩メシは旨い。日が暮れると今度はふだん意識したこともなかった満天の星空が広がる。リゾートである。
●いやあ、あっという間の1週間だったが、カネをかけただけのことはある優雅な夏休みだった。ヨーロッパで生活している役得というか何というか、こういうリゾート・ライフを年に何回か楽しめるというのは本当に得難い経験だよなあと思う。今年の冬はどうしようかなあ。スキーかなあ。カネ足りるかなあ。

99年8月21日(土)

●最終日。チェック・アウトは昼の12時だが、飛行機は18時45分。何なんだ、この時間設定は。仕方なく11時過ぎにチェック・アウトしてファロの街に向かった。ファロまでは1時間。市内でクルマを停めようとしたが例によって場所がない。うろついていると怪しげな兄ちゃんが手招きしてここに停めろと言う。路上である。要は駐車できそうな路上のスペースを見つけてはクルマを誘導して小遣いを稼ぐせこい商売な訳だ。
●だがそれももちろん需要があって成り立っている訳で、現に僕みたいに彼が確保しておいてくれた場所に駐車して小銭をやるバカもいる。でも勝手の分からない街で駐車スペースを探してうろうろさまようよりはこの方が早いのも事実。ともかくクルマを置いて旧市街を見物。それから中心街を歩いて目についたレストランに入った。ありふれた大衆食堂みたいなところだが、表のテラスが賑わっていたので何となく惹かれたのである。
●ポルトガル最後の食事だし財布にはエスクードが結構残っているので、張り込んでシーフードのリゾットにしてみたところ、鍋に一杯のリゾットが出てきたのだが、これがこれでもかというくらい大小のエビがごろごろ入っているダイナミックなリゾットで、やや味は濃いもののエビ好きは泣いて喜ぶ美味しさ。当然エビのダシもよく出ていて米も旨い。きちんと芯の残った正統派のリゾットで、ふうふう言いながら食べたがもったいないことに鍋にはまだ残っていた。
●で、レンタカー屋の事務所でクルマを返し、空港でチェック・インしたのだがなかなか搭乗が始まらない。結局飛行機は1時間遅れで飛び立ったが、デュッセルドルフに到着したのは午後11時過ぎ、荷物を拾ってタクシーで家に帰り着いたのは12時を回っていた。旅行の最終日がこれじゃきつい。倒れるように寝ました。疲れたけど面白かった。楽しい1週間だった。


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