STRANGE DAYS / WILD HEARTS
1986年、佐野元春は3枚のシングルを隔月でリリースした。そのうちの2枚がここにある「STRANGE DAYS」と「WILD HEARTS」だ(あと1枚は「SEASON IN THE SUN」)。初回盤は見開きジャケットの豪華仕様で、値段も通常のシングルは当時700円だったのに対し800円と高かった。セカンド・プレスからは700円の通常仕様となっている。 今回、その初回盤仕様のシングルがどちらも100円だったので思わず買った。初回限定の貴重なものでありどちらかといえばプレミアムがついていてもおかしくない盤が100円。僕でなくてもものの値打ちのわかる人なら買うだろう。 問題は同じものがすでに家にあることである。 最近中古盤屋に出入りするようになって何枚かCDやレコードを買ったし、そのうち何枚かは家に帰ってみたらすでに持っていたということもあったが、初めからダブることをわかったうえでそれでも買ったのはこれが初めてである。これは「持っていない音源を買いそろえる」というのとは本質的に異なる、一線を踏み越えた購買行動だ。 これをやり始めると、すでに持っている作品でも「100円ならとりあえず押さえておこう」「予備に」となって無限に買い物が増えかねない。なにがどう「予備」なのか自分でもよくわからないが、すでに収納場所も逼迫し始めている。いらんものまで買う余裕はないのだ。 それにしても、佐野元春のシングルを初回限定の特別仕様で手に入れながら、それから35年以上を経てそれを手放す事情とはどういうものだろう。中古盤を買うたびにそういうことを考えてしまう。「卒業」なのか、それとも遺品整理なのか。なんにしてもそれがゴミとして処分されず、中古盤屋に買い取られ、さらにはものの値打ちのわかったマニアの手許に流れ着いたのは運命的だ。 音源について触れておくと、2枚のシングルともA面は同年にリリースされたアルバム「Café Bohemia」に収録されたが、ともにミックスが変更されている。またカップリングもあとになってコンピレーションに収録されるまではこのシングルでしか聴けないバージョンだったりしたので、このシングルは音源としても貴重なものだった。 『STRANGE DAYS』はギターの音がジャリジャリと尖っていて、UKのニューウェーブぽいところがアルバムのバージョンよりも好きだ。ただ、アルバム・バージョンはシングルにはない2コーラスめがあり、それを聴いて初めてこのシングル・バージョンが中間を編集したショート・バージョンだったことを知った。 カップリングの『ANGELINA (Slow Version)』は1985年のVISITORS TOURで披露されたスロー・ファンク・バージョン。おそらくはスタジオ・ライブに近いテイクではないかと推測するがこの時期の貴重な音源だ。 『WILD HEARTS』もアルバム・バージョンとは異なり、スネアの音がかなり固くパカパカと軽機関銃のように仕上げられていてこれも好きなバージョン。 カップリングの『SHADOWS OF THE STREET』はニューヨークで知り合ったロン・スレイターと彼の死を歌った曲で、これもVISITORS TOURで披露されていたもの。このバージョンは2006年までCD化されていなかった。佐野のレパートリーのなかでも最も埋もれがちな曲のひとつだ。 見開きのスリーヴのなかにアートっぽいリーフがはさみこみになっており、アイテムとしてもファンなら手許に置きたいもの。2枚あっても困らない。 とはいえすでに持っているものを重複買いするのはなるべく自重しよう…。 2022 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |