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INTO THE HEART OF LOVE
The Mighty Lemon Drops

1989 Chrysalis
[CD Single]
● Into The Heart Of Love
● Rumbletrain
● Sometimes Good Guys Don't Wear White
● Inside Out (Extended Mix)



マイティ・レモン・ドロップスは中途半端なバンドである。位置づけとしてはエコー&ザ・バニーメンとかティアドロップ・エクスプローズあたりのネオサイケの系譜に連なるものとされているが、そこまで有名でもなく、そこまで才能があるわけでもなく、作品はどこかあか抜けない生硬なギター・ロック。NMEの歴史的コンピレーション「C86」にも収録されている程度には認知されており、悪くない曲を書くが、まあ知らない人の方が圧倒的に多いバンドではある。

それでもこのバンドが僕の記憶に残り、デビュー以来のアルバムを律義にレビューするほど長いつきあいになったのは、彼らの音楽がある意味で1980年代のどうしようもない行き場のなさを象徴しているように思えるからかもしれない。これはどこにもつながって行かない音楽だ。若気の至りを凝縮したようなチャーミングさはあったが、彼らを継承する者はだれもおらず、UKロックはこっちとは違う方向に発展して行った。

だが、それだけに「ここまでつっぱらんでええやろ」みたいなバランスの悪さや、「もうちょっと面取りしたええ具合になるのに」的なとんがり方が愛らしく、また耳に残る。そういうところが原因でいまひとつメジャーになりきれないまま消えて行ったいいバンドをオレは知ってるぞ的なナゾのマウントもある。アルバムは全部揃えているし今でも繰り返し聴く。

これは1989年にサード・アルバム「Laughter」からカットされたシングルだ。このアルバムは本当によく聴いた。実際にはデビュー以来ベースとソングライティングを担当していたトニー・ラインハンが脱退してマーカス・ミラーが代わりに加入、バンドの音楽性が微妙に変わって行った境目のアルバムだったのだが、最初はそんなことには気づかず、「お、あか抜けたやん」と気に入って聴いていた。

このシングル盤には4曲が収められていて、「Into The Heart Of Love」はアルバム収録、「Rumbletrain」もアルバムにボーナス・トラックとして収められていた。しかし「Sometimes Good Guys Don't Wear White」はアルバム未収録(1960年代の西海岸のバンド、ザ・スタンデルズのカバー)、「Inside Out (Extended Mix)」はセカンド・アルバム収録のヒット・ナンバーのリミックスでコンピレーションなどでしか聴けないもの。音源としても押さえておくべき盤。

中古盤屋の100円コーナーではなく、ドロップスの仕切板のところで見つけたのだったが、いずれにしても500円もしなかったはずで即買いした。ドロップスの仕切板があるところがスゴい。それにしてもこういうのって、だれが最初に買って、どういう事情でそれを中古盤屋に売るんだろうな。

ドロップスは「Laughter」のあともアルバムを2枚制作し、結局5枚のオリジナル・アルバムを残して解散した。今、冷静に聴けばやはり最初の2枚が圧倒的にいいのだが、当時は3枚目がベストだと思っていた。当時つきあっていたガールフレンドが岡山県に住んでいて、梅田から高速バスで会いに行く車中でよく聴いた。

トニ―・ラインハンが抜けてサイケみが薄れ、パワーポップになったこの作品あたりからなぜかアメリカのカレッジ・チャートでちょこっと人気が出てしまい、それで90年代まで延命した。愛すべき、僕の好きなバンド。



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