POP FILE 1972-2017
伊藤銀次のデビュー45周年を記念してリリースされたCD4枚組のボックス・セット。1枚目がシングル・コレクション、2・3枚目が提供曲のアンソロジー、4枚目がライブ・テイクとレア・トラックのコンピレーションという構成になっている。 1枚目のシングル・コレクションは『風になれるなら』から『涙の理由を』までの18曲を収録。『夜を駆けぬけて』のシングル・バージョンは初CD化で価値のあるもの。『涙の理由を』の「'94 Mix」(鈴木雅之をフィーチャーしたバージョン)もコンピレーションに収録されるのは初めて。 2・3枚目は加川良からWhiteberryまで34曲を収録。銀次が作詞・作曲・編曲のいずれかで関わった楽曲で、ごまのはえの『留子ちゃんたら』、シュガーベイブの『DOWN TOWN』、ナイアガラ・トライアングルの『幸せにさよなら』(シングル・バージョン)を含む。 銀次の提供曲は多岐に亘って多数に上り、ここに収められたのはそのごく一部だが、これを聴くだけでも銀次が日本のポップス史上に果たした役割の大きさ、銀次の作曲家としての才能の奥行きや編曲家としてのレンジの広さが分かるし、また銀次が音楽業界で幅広い信頼を得て来たことが実感できる。 4枚目はライブ・テイクが中心。『夜を駆け抜けて』は1985年の佐野元春&ザ・ハートランドの「VISITORS TOUR SPECIAL」からの音源。佐野のコーラスも聞こえる。貴重なテイクだ。『Night Pretenders』から『愛をあきらめないで』の4曲は2015年12月27日に下北沢440で行われたライブ「WINTER WONDER MEETING 2015」からのテイク。 『いちご色の窓』から『幸せにさよなら』の10曲はインターネット・ラジオ番組「伊藤銀次のPOP FILE RETURNS」のためのスタジオ・ライブから。番組ではソニー以外のレーベルの曲の音源が使用できないことからスタジオ演奏したものと説明されている。『しゃべりたいな』はごまのはえ時代の曲。『ウキウキWATCHING』と『幸せにさよなら』には杉真理と故村田和人が参加している。 「ボーナス・トラック」とされている『ほこりだらけのクリスマス・ツリー』はアルファ・レコードのコンピレーション「WE WISH YOU A MERRY CHRISTMAS」に提供した曲。知る人ぞ知る名曲だ。『こぬか雨』はココナツ・バンクが大瀧詠一に聴かせるために自宅で演奏したデモで著作権のクレジットは「ナイアガラ・エンタープライズ」となっている。初音源化されたものである。 『夜を駆けぬけて』のシングル・バージョン、『IMAGINE』などは貴重なトラック。一方で『WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT』や『Lucy In The Sky With Diamonds』、『雨のステラ』の別バージョンや『Baby Blue』の佐野元春とのデュエット・バージョン、『Beat City』のクラブ・ミックスなどは未収録。ボリュームの割りに提供曲のパートが分量的に多く、銀次自身の音源が少ないのは残念。銀次の作曲家・編曲家としての足跡をたどるという意味はもちろんあるにせよ、銀次自身のこうした貴重なバージョンも拾って欲しかった。 1万円といいお値段だが、銀次自身による解説を掲載したブックレットも付属しており、こういうのは手に入るうちに押さえておくべきだろう。Sony Music Shopでの限定発売。 【曲目】
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