I STAND ALONE 2009年から始めたソロの弾き語りライブ「I STAND ALONE」が好評だったことから、ライブでのアレンジをベースにギター1本のアンプラグド・パフォーマンスで過去の曲をセルフ・カバーした企画盤。Vol.1とVol.2は新宿のライブ・ハウス「レノン・ハウス」でのホール録音(無観客)、Vol.3とVol.4はスタジオ録音となっている。 当初はライブ会場及びレーベルのサイトでの通販のみでリリースされたが、その後一部で一般販売されている。Silvertoneレーベルは伊藤銀次のプライベート・レーベルであり、現在はサイトも閉鎖されている。 2009年にまずVol.1とVol.2が、続いて翌2010年にVol.3とVol.4がリリースされており、根強いファンの間で好評を博したことが窺われる。音源はiTunes Storeなどで入手可能のようである。 収録曲はポリスター期を中心に選ばれており、代表曲も少なくないが、ギター1本での弾き語りに合う曲かどうかも考えながら、当時のライブでの演奏曲を中心にセレクトしたのではないかと推測する。 銀次の書く曲は、平易で分かりやすいメロディのように聞こえながら、その中には驚くほど複雑なコード進行や繊細な音階が隠されている。オリジナル・アルバムのバンド・アレンジでは気づかないまま通り過ぎそうになる銀次のそうしたソングライティングの奥行きを、銀次自身によるギター1本の演奏が丁寧になぞって行く。 それはひとつひとつの曲の本質とか核のようなものを必然的に露わにするアプローチであり、曲の魅力の再発見である。まるで種明かしのように銀次のギターとボーカルだけで表現される曲を聴くことで、リスナーはかつてその曲が自分に残した印象の成り立ちを改めて思い起こすことができる。 ギター1本の弾き語りというスタイルは、おそらくはライブでのポータビリティやモビリティを重視したものだったのだと思うが、それによってリスナーに曲の本質を提示するとともに、おそらくは銀次自身もレパートリーの棚卸を通じて自身のキャリアと向かい合うことになったのではなかっただろうか。 アレンジは原曲のアレンジを何とかギター1本に移し替えようという努力が奏功しているものもあれば、ややムリのあるものもあって出来不出来がある。曲によってはアコースティック向けにまったくリアレンジすることがあってもよかったかもしれない。いずれにしても、この地に足のついた活動が伊藤銀次というアーティストの現在を形作ったのは間違いない。企画盤ではあるが聴くべきアルバムだ。 2017-2018 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |