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ココナツ・バンク ●東京マルディグラ
 (作詞・作曲 伊藤銀次/編曲 ココナツ・バンク)
●天気予報図
 (作詞・作曲 伊藤銀次/編曲 ココナツ・バンク)
●航海記
 (作詞・作曲 伊藤銀次/編曲 ココナツ・バンク)
●憧れの南国鉄道
 (作詞・作曲 伊藤銀次/編曲 ココナツ・バンク)
●MAD冬景色
 (作詞・作曲 伊藤銀次/編曲 ココナツ・バンク)
●ココナツ・ホリデー2003
 (作詞・作曲 伊藤銀次/編曲 ココナツ・バンク)
ココナツ・バンク
2003.6.25
OMAGATOKI / OMCA-5015

■PRODUCER : ココナツ・バンク

前作「LOVE PARADE」から実に10年を経て届けられた6曲入りミニ・アルバム。ココナツ・バンク名義だがオリジナル・メンバーは銀次(vo,g)と上原ユカリ(dr)のみであり、実質的には銀次のソロと考えて差し支えのない作品。バンドとしては銀次、上原の他、井上富雄(b)と久保田光太郎(g)。

前作発表後、銀次はウルフルズ、ユースケ・サンタマリア、七尾旅人などのプロデューサーとして一定の評価を得てきた。もはやみずからプレイヤー、アーティストとして作品を発表することはないのかと思われていたが、その中でつのった「自分の音楽をやりたい」という欲求が結実した作品である。2002年、「喫茶ロック」のイベントにココナツ・バンク名義で出演したことが直接の契機となっている。

歌詞に「オールド・ナイアガラ」的な語呂合わせ、駄洒落が顔を出して僕としては苦笑するしかない部分もあるが、曲作りという点ではこれまでの銀次の活動をまるごと引き継ぎながら、鮮烈というしかないメロディ・ライン、サウンド・プロダクションで、2003年型の銀次を聴かせる。M-1「東京マルディグラ」がセカンド・ラインのドラムで始まるのを聴いた瞬間に何かとんでもないことが詰まっているのを予感させる、文句なしの傑作である。

テーマはトロピカル、コロニアルであるが、実際には非常に優れたアーバン・ポップである。だが何より重要なのは、テーマ自体より、銀次が「ココナツ・バンク」というコンセプトの下に、明確なテーマを持って作品をまとめて行ったという事実だろう。プロデューサーとして何人ものアーティストを世に出してきた銀次が、アーティストとして何を「自分の音楽」として演奏するのか、明確な答えのないままソロ・アルバムのレコーディングに臨んでいたら、それはおそらく散漫で雰囲気に流れた作品になっていたに違いない。木崎賢司に徹底したメロディー優先での曲作りを強いられた「Baby Blue」が結果的に名盤となったように、「ココナツ・バンク」という軸を貫いた本作が、曲調はバラエティに富みながらアルバムとして非常にまとまった印象を残して行くのは象徴的だ。

ココナツ・バンク名義の作品ということであまり期待せずに聴いただけにそのあまりの素晴らしさに言葉を失った作品。これこそ僕が10年間待ち続けた「伊藤銀次」のアルバムだ。


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